清水美沙と工藤静香、前田敦子、石田ゆり子…「クリスマスと日本映画」の好相性を堪能できる映画4選【冬の映画案内】

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 古くから「クリスマス映画」がジャンルとして成立している欧米では、時代を超えて愛される名作が数多く生まれている。対して日本では、クリスマスを重要なフックとしてストーリーを展開させる作品が魅力的だ。この時期にぴったりな「クリスマスが出てくる日本映画」を、映画解説家の稲森浩介氏が紹介する。

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もし人生が繰り返せたら

〇「未来の想い出―ラストクリスマス―」 (1992年)

「もし過去に戻れたら」という誰もが夢見る願望をファンタジックに描きながら、人生の本当に大切なものを見つけていく物語。藤子・F・不二雄の漫画を原作に、森田芳光監督がメガホンをとっている。

 売れない漫画家の納戸遊子(清水美砂)と、結婚生活がうまくいっていない主婦・金江銀子(工藤静香)。1991年のクリスマス・イブに出会うが、2人とも相前後して死を迎えてしまう。目が覚めると、どちらも10年前の世界に戻っていた。2人は未来の記憶を利用して人生をやり直し、仕事や恋愛など思いのままに生きる。しかし10年後のクリスマス・イブに再び死を迎え、またもや過去に戻ってしまう。3度目の人生を2人はどう生きるのか。

 当時の工藤静香は、アイドル歌手としてヒット曲を連発していた。一方、「君が嘘をついた」(1988年)や「世界で一番君が好き」(1990年)などのトレンディドラマにも出演し、人気絶頂の頃。バブル期の装いや珍しいショートヘアがとても魅力的だ。

どこか皮肉めいた作品

「湘南暴走族」(1987年)でデビューした清水美砂は、NHK連続テレビ小説「青春家族」(1989年)でヒロインを務める。その後も「稲村ジェーン」(1990年)、「シコふんじゃった。」(1992年)などの話題作に出演する注目女優だった。

 金江のOL時代の同僚役の松永光代は、芸能事務所「タイタン」の社長で「爆笑問題」の太田光夫人の太田光代だ。当時タレント活動をしていたが映画出演は少ないので、貴重な映像かもしれない。

 本作公開の1992年はバブル崩壊直後だったが、作中ではファッションやタクシーチケット、リゾート、パーティなど派手な様子が見られる。銀子が過去の記憶を利用して、金銭的な成功やリッチな生活を追求するのは、当時の世相を象徴しているともいえよう。この後の世界を知っている我々には、どこか皮肉めいた作品にも思えるのだ。

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