日本初の“百貨店ゼロ県”になって5年 東京よりある意味便利?「集約化」と「ローカル愛」で戦う地方の買い物事情
相撲ならではのユニーク施策
奇しくも、訪れたのは九州場所が終わった翌日の月曜だった。“佐渡ヶ嶽部屋へのご声援に感謝して”と謳われたセールが実施されており、一部の商品をのぞくほとんどの商品が、この日だけ12%引きとなる大盤振る舞いだった。近隣の競合スーパーと比べてもあきらかに多くの人出があったのを見ると、このセール効果は抜群のようだ。大相撲の本場所は6場所あるから、2ヶ月おきにこのセールは実施されることになる。強い購買行動につながっていそうだ。
場所中には「勝どきサービス」という、佐渡ヶ嶽部屋の力士が白星を挙げた際に行われるタイムサービスもあるそうだ。さらに2,000円以上の買い物をすると、抽選で100名を「佐渡ヶ嶽部屋激励合同忘年会」にご招待……。おーばんは想像以上の佐渡ヶ嶽部屋一色スーパーだった。
この施策は、おーばんの二藤部洋社長と佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)がおなじ山形県尾花沢市出身という縁で始まったという。地元企業として力士を長年応援していたのが、今では部屋全体への支援に発展していったらしい。
小売業が、地元のサッカーチームやバスケットチームと連動する企画はままあるが、相撲部屋との取り組みは初めて聞いた。これが普通のスポーツチームとなると、優勝や勝利など“お祝い事”にかこつけた企画の回数は限られる。その点、相撲部屋そのものを“推す”のであれば、力士は複数いるから、年90日間の場所中は「勝どきサービス」を定期的に行えるし、場所終了後にはご声援感謝セールができる。顧客の年齢層を考えても、売上アップ施策として秀逸である。地域社会に役立つ地元食材の販売やイベント活動と、相撲の伝統がイメージ的にもマッチして、企業のブランド価値向上にも役立ちそうだ。
リアル店舗の小売業は、第一には便利な買い物環境を創出することも求められるが、その点でネット通販には勝てない点も多い。おーばんの例のように、商品を販売したりサービスを提供するだけでなく、その町の人の生活を支え、ファンを創出していくことが重要である。それを改めて知った山形の流通視察だった。














