「生存率が向上」と「依然として難治」に明暗分かれる…国立がん研究センターの調査結果から分かった「がん5年生存率」の最新データ
日本は先進国の中で「がんの死亡率」が最も高く、年間約40万人もの命が奪われている。そうした中、11月19日に「国立がん研究センター」が公表した、がん患者の「5年生存率」に関する最新の調査結果が注目を集めている。
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※本稿は「週刊新潮」2025年12月18日号掲載【「5年生存率」最新調査で判明した恐がるべき「がん」の部位】の一部を抜粋/編集したものです。
【写真を見る】ワースト1位は男女で共通 最新データによる「がん」の部位別5年純生存率
最新の調査結果によると……?
日本では男性の4人に1人が、女性は6人に1人が「がん」で亡くなっていると聞けば、“死に神”といっても過言ではない。
しかも厄介なのは、ひと口にがんといっても、その種類は多岐にわたること。罹患した部位によって検診から治療までの方法、そして生存率は大きく異なるのだ。健康診断で見つかることもあれば、人間ドックなど専門の医療機関で検査しないと分からないこともある。いざ治療となっても、標準治療をはじめ高額医療を伴うケースまで千差万別である。
いったい何が正解なのか。その答えを求める人々のために、巷にはがんに関する情報があふれている。我々が“死に神”から逃れるためには、まず命を奪う可能性の高い恐れるべきがんの部位を把握、その傾向と対策を知ることが大切だろう。
はたして数多あるがんの中でも死亡率が高いのはどの部位なのか。それを知るのに最良な調査結果が、このたび発表された。
重要な“5年”という指標
先月19日、国立がん研究センターは「全国がん罹患モニタリング集計 2012-2015年生存率報告」と題した調査結果を公表した。がんと診断された日から5年後までに、どれだけの患者が生存したか。その割合を部位別に集計したものだという。
今回の調査では、国際的に標準的な指標とされる「純生存率」を計算方法に採用して、がん以外の死因の影響を除外。従来と比べてより正確で妥当な生存率データになった。また44都道府県の「地域がん登録情報」を活用して、11年から15年までの診断症例を集計。前回調査(09年から11年まで)の36地域よりも増加し、罹患データの精度も格段に向上した。
琉球大学名誉教授で医学博士の藤田次郎氏に聞くと、
「がん治療では、罹患してから5年間を生き残ることができれば“がんは治った”とする考え方が伝統的にあります。適切な治療が実施され、患者さんが5年以上生存している際には、自身の免疫作用も加わってがん細胞が除去された可能性が高い、という考え方に基づき『5年生存率』という指標が定着したのだと思います。最近は新薬の登場などで、がん種によっては完治していなくても5年以上生き永らえることが珍しくない。そんな病気に変わりつつあります」
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