「生存率が向上」と「依然として難治」に明暗分かれる…国立がん研究センターの調査結果から分かった「がん5年生存率」の最新データ
がん治療“最後の難関”
そう考えると「5年生存率」が高い部位のがんは、ある程度は治療法が確立しており、過度に恐れる必要はないとも言える。逆に言えば、これだけ医療が発達した現代でも「5年生存率」が低いがんは要注意なのだ。
件のデータを取りまとめた国立がん研究センターがん対策研究所・がん登録センター利活用推進室の堀芽久美室長によれば、
「特に今回のデータで特徴的だったのは、多くの部位で生存率が向上している点です。中でも著しい改善が見られたのは、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、白血病といった『血液腫瘍』の生存率です。これらの生存率が大きく向上した要因としては、治療法が進歩し、治療効果が大きくなったこと。病院へのアクセスが良くなったこと。そして患者支援体制が充実したことなどが、複合的に影響していると考えられます」
生存率の全般的な向上とは裏腹に、依然として低い値にとどまる「難治がん」もあるとして、堀室長はこう続ける。
「男女ともに『膵臓がん』は最も低い生存率となっています。それに次ぐ『胆のう・胆管がん』も、生存率が低い状態が続いています。これらのがんは、有効性が証明されている確立したスクリーニング検査がありません。早期発見が非常に困難なので、症状が出てからでないと罹患に気づかない人が多く、異変を感じたら速やかに治療を受ける必要があります」
事実、「部位別5年純生存率」の表を見ても5年生存率は「膵臓がん」は男性が10.7%、女性で10.2%。日進月歩のがん治療の中でも“最後の難関”と言われる所以だ。がんによる死亡者数では男女合わせて3位。1位の肺がん、2位の大腸がんに次いで、亡くなる人が多いのである。
膵臓がんで亡くなった著名人も、女優の八千草薫さんをはじめ、プロ野球の星野仙一さん、大相撲の千代の富士、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏など枚挙にいとまがない。がんが発見されてから5年を経たずに没した方も数多い。
膵臓がんの治療は時間との闘い
「5年生存率は以前から膵臓がんがワーストワンですが、理由を一言で示すなら悪性度が非常に高いということでしょうか」
そう話すのは、消化器外科および肝胆膵外科医で、静岡県立静岡がんセンター総長を務める上坂克彦氏だ。
「具体的に申し上げると、膵臓がんの周辺への浸潤や他臓器への転移などが、他のがんと比べても非常に早く起こることが挙げられます。今回5年生存率が90%以上あるがんの代表は、男性なら前立腺がん、女性は甲状腺がんですが、これらは比較的ゆっくり進行する。ところが膵臓がんは進行が速く最初は自覚症状がありません。腹痛や背中、腰の痛み、黄疸や体重減少など異変を感じて発見された時点で、すでに手術が難しい方が8割近くもいます」
膵臓がんの場合、ステージ2までなら手術と抗がん剤を組み合わせた治療が可能だが、多くの患者は発見された時点でステージ3や4のケースが多い。そうなると、抗がん剤や放射線治療が中心となり、完治は困難な場合が多いという。
「他院で膵臓がんが見つかり、まだ手術が可能な状態だったが、発見から1カ月ほど経って当院に来られた時に詳しく検査したところ、もう手術ができない状態になっていることもあります。個人差はありますが、それほど膵臓がんの治療は時間との闘いなのです。膵臓がんは1センチ以下で見つけたいのですが、多くの場合それは至難の業。2センチになったら、すでにそれなりの進行がんになってしまっています」(同)
〈有料版の記事【最新調査で分かった「部位別」「地域別」のがん5年生存率 「正しく恐れる」ために必要な知識とは】では、生存率の低いがんに罹患するリスクの高い人や、そうした人が定期的に受けるべき検査の種類について、そして最新調査で分かった“地域別”のがん5年生存率など、“死に神”と呼ばれるがんを正しく恐れるための最新知識を6000字にわたり詳報している〉
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