「高市政権の物価高対策は逆効果」と専門家が指摘 「強制的に物価を下げても“治療”にはならない」
高市政権は“責任ある積極財政”を旗頭に掲げている。しかし、その肝いりの物価対策が市場に財政不安を喚起して円安を招き、かえって輸入品目を中心に物価高を起こす――。そんな、物価高対策に潜む“矛盾”を指摘する声が市場関係者の間で相次いでいる。
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ニッセイ基礎研究所の上野剛志(つよし)氏が言う。
「高市首相の財政拡張政策に対する市場の不安が、円安傾向に拍車をかける可能性があります。円安が進行した場合、日本が海外から輸入している原材料やエネルギーなどの輸入物価が上昇します。結果、国民の負担を軽減するための物価高対策が、消費者物価指数の上昇を招く悪循環に陥りかねないと見る向きがあるのです」
積極財政が財政不安を招く、との見方について第一生命経済研究所・首席エコノミストの永濱利廣氏は何と言うか。氏は、高市政権の経済政策を策定する「経済財政諮問会議」の民間議員である。
「高市首相は“プライマリーバランス(PB=基礎的財政収支)の単年度黒字化”にこだわらない新たな財政規律を確立しようとしています」
PBの黒字化に重きを置かない高市政権
小泉政権が2001年に「骨太の方針」で財政健全化の目標として“PBの黒字化”を掲げて以来、歴代政権はこれを金科玉条としてきた。しかし、高市政権はPBの黒字化には重きを置かないというのだ。
「デフレ時代と異なり、現在のように名目成長率が長期金利を上回るインフレ下では、PBを黒字化しなくても債務残高の対GDP比は下がるからです」(永濱氏)
どういうことか。日本成長戦略会議の有識者メンバーで、PwCコンサルティング合同会社・チーフエコノミストの片岡剛士(ごうし)氏が解説する。
「例えば1000万円の借金があったとして、年収1億円の人と年収100万円の人ではその重みはまったく違います。将来、借金を返せそうかどうかを判断する際は、所得との比較で見る必要がある。それは国で考えても同じこと。年収に当たるGDPが増えていけば、借金である債務残高は目減りするというわけです。債務残高自体を減らすのに加え、安定かつ着実な経済成長を続けることが重要といえるでしょう」
さらに言うには、
「PBの黒字化より、政府債務残高対GDP比を引き下げていく方が、世界では一般的ですね」
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