「高市政権の物価高対策は逆効果」と専門家が指摘 「強制的に物価を下げても“治療”にはならない」
「日本の信用力は低下していない」
一方、片岡氏と同じく成長戦略会議のメンバーで、クレディ・アグリコル証券のチーフエコノミスト、会田卓司(たくじ)氏は最近の円安傾向についてこう話す。
「財政が拡大すると内需が拡大しますから、金利の先高観が出てゆくゆくは円高になるはず。では、日本は財政拡大の方針を決めたのに、なぜ、足元では円安が続いているのか。それは為替相場が相対的なもので、アメリカが日本以上に財政拡大をやっているからです」
安倍政権で内閣官房参与を務め、高市首相の経済ブレーンとして知られる本田悦朗氏は、
「日本の信用力は低下していません。その証左がクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)です。CDSは国債がデフォルトした場合の一種の保険です。国債がデフォルトしてもCDSさえ払っておけば全額戻ってくるという金融商品で、国の信用力の指標にもなります。現在の日本の国債のCDSは非常に安い価格で取引されています。誰も日本の国債がデフォルトすると思っていないからです」
と、指摘する。
「現在の日本の物価高の要因はいくつかあります。諸外国におけるコロナ禍後のインフレで海外の品物自体が値上がりしているほか、ロシアのウクライナ侵攻で世界の穀倉地帯であるウクライナから小麦などの穀物の輸出が滞っていることなどが挙げられます。円安で輸入物価が上がっているものもありますが、その影響は最近ではかなり限定的だといえるでしょう」(同)
「火を消そうとしてうちわであおぐようなもの」
永濱氏が再び言う。
「高市政権になって円安は6~7%ほど進みましたが、試算ではその円安に伴う物価の押上幅は短期的に0.1%程度です。ところが、今回の電気・ガス料金の補助によって来年2~4月に限れば、0.4%の消費物価押し下げになります。さらに、ガソリン暫定税率の廃止で、来年12月にかけて同じく年0.3%の負担減にもなる。物価高になるのではなく、むしろ物価は押し下げられる見込みです」
片や、慶應義塾大学経済学部教授の小林慶一郎氏は高市政権の物価高対策に批判的な立場を取る。
「お米券を配るほか、電気・ガス料金の補助などで一時的に物価を下げたとしても、それは政策によって強制的に物価高を抑え込んでいるだけの状態です。補助金で国民の消費が増えれば、それがまた結果として物価を押し上げる力となってしまうでしょう。これでは物価高を抑える“治療”にはなりません。例えば火を消そうとしてうちわであおぐようなもので、逆に火が強くなるリスクが高まります」
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