都心マンション「35年ローン」or「50年ローン」or「賃貸」どれが正解? データが導く令和の最新結論は

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最終的な判断基準

 都心マンションは、もはや「住まい」というよりも「金融商品」としての性質を強めています。今後の住まい方は、買うか借りるかという二択ではなく、「どれだけリスクを取るか」の選択になっているのです。

 その視点で見れば、都心でマンションを買うという選択肢は、あまりにも負担が大きく、リスクも高い時代になっていると言わざるを得ません。

 最終的な判断基準として、以下の3つの視点を持つことをお勧めします。

「資産形成」が目的なら、都心マンションよりも株式や投資信託のほうが効率的です。1億円以上の資金を30年以上も固定してしまうよりも、流動性が高く、分散投資が可能な金融商品のほうが、リスク管理の観点からも優れています。

「住む場所の確保」が目的なら、賃貸のほうが柔軟で負担が少ないでしょう。ライフステージの変化に応じて住み替えができ、突発的な修繕費用の心配もなく、金利上昇のリスクとも無縁です。月々の家賃は「住むための対価」と割り切れば、むしろ合理的な選択と言えます。

「どうしても所有したい」なら、35年以内のローンで無理のない返済計画を立てることが絶対条件です。50年ローンは、たとえ月々の返済額が抑えられても、長期的には債務超過のリスクが高すぎます。また、頭金を十分に用意し、年収に対して無理のない価格帯の物件を選ぶことが重要です。

時代の変化を受け入れる勇気

 かつて、マイホームを持つことは「一人前の証」であり、「人生の目標」でした。しかし、時代は大きく変わりました。終身雇用は崩壊し、働き方は多様化し、人生100年時代を迎えた今、30歳で組んだ35年ローンは完済時に65歳、50年ローンなら80歳です。

 その間、金利は変動し、建物は老朽化し、家族構成は変わり、働き方も変わるかもしれません。そうした変化の中で、巨額の借金を抱え続けることが本当に「安心」なのでしょうか。

 賃貸は「家賃を払い続けても何も残らない」と言われますが、マンションを購入しても30年後に残るのはわずかな純資産か、場合によっては債務超過です。それならば、柔軟性を保ち、リスクを最小限に抑えながら、その時々のライフスタイルに合った住まいを選べる賃貸のほうが、現代的で合理的な選択ではないでしょうか。

「持ち家か賃貸か」という古い二項対立ではなく、「どう生きるか」「どこに価値を置くか」という、より本質的な問いに答えることが、令和時代の住まい選びには求められているのです。

 都心マンションの価格高騰は、私たちに新しい住まいの価値観を考えるきっかけを与えてくれたのかもしれません。固定観念に縛られず、データと論理に基づいて、自分にとって最適な選択をする。それこそが、この不確実な時代を生き抜く知恵なのではないでしょうか。

(出典)
不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向2024年」
東京カンテイ「三大都市圏・主要都市別/中古マンション70平方メートル価格推移」
リクルート「2024年首都圏新築マンション契約者動向調査」

寺岡孝(てらおか・たかし)
住宅コンサルタント。1960年東京都生まれ。アネシスプランニング株式会社代表取締役。住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務した後、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。住宅の建築や不動産購入・売却などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行っている。これまでに2000件以上の相談を受けている。NHK名古屋「ほっとイブニング」「おはよう東海」などTV出演。東洋経済オンライン、ZUU online、スマイスター、楽待などのWEBメディアに住宅、ローンや不動産投資についてのコラム等を多数寄稿。著書に『不動産投資は出口戦略が9割』『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』『不動産投資の曲がり角で、どうする?』(いずれもクロスメディア・パブリッシング)がある。

デイリー新潮編集部

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