「備蓄米の買い入れ再開」「おこめ券の使用期限は来年9月末」…農水省の方針から透けて見える“コメの高値安定”という暗い未来

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 第2回【なぜ「おこめ券」は消費者から歓迎されないのか 「自治体の反発」「1枚500円なのに実質440円」だけじゃない「鈴木農水相」に批判が集まる“もうひとつの理由”】の続き──。鈴木憲和農水相は12月5日の大臣会見の際、記者から国内最大のコメ卸・神明ホールディングスの藤尾益雄社長が2日に新潟県新発田市で行った講演内容に関して質問を受けた。(全3回の第3回)

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 その際、記者は「神明」を「じんみょう」と誤読。質問が終わると鈴木農水相は「『じんみょう』ではなくて『しんめい』ホールディングスということになろうかと思います」とわざわざ訂正して薄く笑った。

 ところが、会社の名前はご丁寧に修正しておきながら、「大臣としてコメントするということは差し控えさせていただきたいというふうに考えております」と素っ気ない口調で回答を拒否した。

 一体、藤尾社長はどのような発言をしたのか、重要なポイントは2つある。1つは「コメの適正価格は5キロ3500円」と問題提起したことであり、もう1つは「このままの状態が続けば6月末にコメの民間在庫は過去最大に達し、暴落の可能性が極めて高くなる」と警鐘を鳴らしたことだ。担当記者が言う。

「新発田市の会場にはJAの関係者とコメ農家が出席しました。そして藤尾社長は、今のコメ価格は適正価格から大幅に上昇しているため、特に国産米は全く売れていないと説明。コメ卸などには在庫の新米が積み上がっていると明かしました。藤尾社長によると、コメの民間在庫が220万トンを超えた年は価格が下がる傾向があり、このままの状態が続けば来年6月末には最大229万トンに達するそうです。その結論、もし5キロ5000円という異常な高値が今後も続き、消費者のコメ離れが加速すれば、6月末にコメの価格が暴落するかもしれないと指摘したのです」

おこめ券で高額なコメを買い支え

 藤尾社長の講演内容に関して、鈴木農水相は大臣会見で「報道について私も拝見をさせていただきました」とは答えている。

 内容を把握しているのなら、記者の質問に答えるべきではなかったのか──この点については様々な意見があるだろう。ただし、鈴木農水相が物価高対策としておこめ券の配布に意欲を見せているとなると話は別だ。

「おこめ券を実際に配布するのは地方自治体です。そのため自治体向けの説明会を農水省が開いているのですが、担当者からは使用期限に関する質問が相次いでいました。従来のおこめ券は金券で期限などありません。ところが、物価高対策として税金を使うとなると、期限を設定する必要があるそうです。また、換金や転売の防止策という目的もあるでしょう。ところが、その使用期限は来年9月だというのです。これほど短いと、多くの消費者がコメの購入に殺到する可能性があります。これだけでもコメの価格を高止まりさせてしまうことが懸念されます。さらに、もし6月にコメの価格が暴落したら、おこめ券で“買い支える”シナリオも考えられる。藤尾社長が言うように、コメ5キロが3500円までなだらかに下がる政策こそが、本当の物価高対策なのではないでしょうか」(同・記者)

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