なぜ「おこめ券」は消費者から歓迎されないのか 「自治体の反発」「1枚500円なのに実質440円」だけじゃない「鈴木農水相」に批判が集まる“もうひとつの理由”
第1回【「コメ卸」最大手まで「5キロ3500円が妥当」と指摘も…鈴木農水相は「コメ価格にコミットしない」のか ついに「5キロ4335円」の過去最高値を更新】の続き──。鈴木憲和農水相は12月9日、閣議後の記者会見で複数の記者から「物価高対策として『おこめ券』を配布することは問題があるのではないか」と質問された。(全3回の第2回)
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鈴木農水相は質問に「コメの値段に影響を与えたいということは一切ない」「JAグループに何か利益誘導するということは全くありません」と否定した。しかし、ネット上には反論が殺到しており、炎上に近い状態になっている。
読売新聞は11月21日から23日にかけて実施した世論調査で、おこめ券の配布に関する賛否を質問した。結果は賛成が49%、反対は42%と拮抗した。担当記者が言う。
「鈴木農水相は就任時から『物価高対策、コメ高騰対策として、おこめ券を国民に配布したい』と強い意欲を見せていました。当初、ネット上では『もらえるなら欲しい』という賛成意見と、『ただでさえ高額のコメ価格が高止りしてしまう』と反対する意見が拮抗していました。つまり、読売新聞の世論調査と同じ傾向を示していたわけです。ところが12月に入ると、急速に『おこめ券反対』の声が強まったような印象を受けます。その理由の一つとして“自治体の反乱”が挙げられると思います」
高市政権は物価高対策として「令和7年度の補正予算案に自治体が自由に使える『重点支援地方交付金』を2兆円計上する」という方針を明らかにしている。
つまり「政府は物価高対策の原資として自治体に税金を配るから、その使い道は自治体に任せる」というスタンスなのだ。実際、物価高対策としてはプレミアム付き商品券や地方のデジタルポイントの発行、上下水道料金の値下げ、給食費無償化の原資……など様々な施策が計画されている。
60円のマージンでJAはボロ儲け?
そうした物価高対策の一つとして、政府は「おこめ券の配布」を推奨しているわけだ。
だが、一部の自治体は「おこめ券の配布」に難色を示している。何しろ配布するとなると、おこめ券を調達し、住民への配布方法を決め、配布を実施し、利用方法の問い合わせやクレームに対応する必要がある。
このための事務コストが馬鹿にならないという指摘が自治体から飛び出した。これが世論に大きな影響を与えている。
12月9日現在、新聞各紙が「おこめ券は配付しない」「おこめ券の配布に後ろ向き」と報じた自治体は、江戸川区(東京都)、大阪市(大阪府)、交野市(同前)、福岡市(福岡県)、北九州市(同前)、仙台市(宮城県)、静岡市(静岡県)、旭川市(北海道)、岩見沢市(同前)などがある。
「消費者が何より疑問視しているのは、現行のおこめ券は500円の額面で440円しか使えないことです。60円は印刷費や利益などの“マージン”であり、多くの専門家が『60円は手数料12%と同じであり、これは高すぎる』と口を揃えています。この60円の“マージン”を税金で負担していいのかという疑問も根強いものがあります。もし自治体がJAの『おこめギフト券』を配れば、60円がJAに入る可能性があるのです。さらに消費者の怒りを買ったのは、『配布されるおこめ券には使用期限が新しく設定される』との報道があり、それを鈴木農水相が大臣会見で認めたことです」(同・記者)
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