「高市さんは財務省を意図的に“敵視”している」 補正予算会議で財務官僚をシャットアウト 「安倍さんの“財務省不信”を受け継いでいる」
財務省を意図的に“敵視”
ご存じ片山氏は旧大蔵省出身。財務省には在職当時の部下も多い。財政規律を旨とする財務官僚たちの“防波堤”の役割を担っているそうで、
「今回、片山さんは完全に財務省を押さえ込んでいますよね。“総理がこう言っているんだからやりなさい”という感じでハッパをかけたようです」(青山氏)
そもそも高市首相は、財務省を意図的に“敵視”している節があるとか。
政治部デスクによれば、
「高市さんの座右の書は『安倍晋三回顧録』なんです。同書の中で、安倍さんは財務省について〈彼らは省益のためなら政権を倒すことも辞さない〉と語っている。そうした“財務省不信”の考え方を、高市さんは受け継いでいます」
実際、補正予算の額を決めたとされる11月16日の会議に、財務官僚は同席していなかったという。
「高市首相のかけ声の下、休日返上で首相公邸に集まったのは片山財務相、木原稔官房長官、城内経済財政相らの閣僚と官房副長官ら。財務官僚はシャットアウトされ、翌17日になって高市首相は財務省の事務方トップ・新川浩嗣事務次官と面会しています。ちなみに新聞の首相動静に彼の名前が掲載されるのは初めて。高市首相就任後1~2回は官邸に出入りしていたようですがね。高市首相自身が動静に載せるのを嫌がって裏口から通していた。それくらい財務官僚を遠ざけているのです」(同)
首相と面会した新川次官は、大盤振る舞いとなった補正予算の実態を聞かされて面食らったに違いない。
「高市首相は“規模ありき”で予算規模を決めています。経済対策のメニューなど限られていますから、内訳を見れば他党提案を丸のみしていることが分かります。日本維新の会が求めていた電気・ガス代補助の増額。さらに公明党が求めていた子ども1人あたり2万円の給付を行う『物価高対応子育て応援手当』、国民民主党が求めていた自賠責保険の運用益の一部返還など。これらを積み上げた結果、財務省原案より多い額を国民に示すことができたのです」(同)
「絶対にお米券は配らない」
総合経済対策が閣議決定された直後、会見に臨んだ高市首相は、こう胸を張った。
「内閣発足以来、国民の皆様が直面する物価高への対策を最優先に掲げてまいりました。国民の皆様に迅速に対策の効果をお届けするため、与野党の皆様と協議を重ね、日本と日本人の底力で不安を希望に変えるべく、強い経済を実現する総合経済対策を先ほど政府与党で決定いたしました」
たしかに高市首相肝いりの「総合経済対策」における歳出案は、「生活の安全保障・物価高への対応」が8兆9041億円。「危機管理投資・成長投資」に6兆4330億円、「防衛力と外交力の強化」に1兆6560億円。われわれの暮らしに直結する物価高騰への処方箋のために、約9兆円が費やされているのだ。
その内訳を細かく見ると、前述した他党案の「電気・ガス料金の補助」に5296億円、「子育て応援手当」に3677億円を充てているが、注目すべきは地方自治体が活用できる「重点支援地方交付金」。今年度の追加分として2兆円が拡充された。
先のデスクが解説する。
「端的に言えば、都道府県の各自治体が地域の実情に応じて生活者・事業者への支援を行えるお金となります。国としては、生活者支援に向けて五つのメニューを提案していますが、目玉となるのが『食料品の物価高騰に対する特別加算』。いわゆるお米券やプレミアム商品券、電子クーポンなど、それぞれの自治体が判断して住民に支援を行えるようになっています」
食料品でいえば、とっくに新米が出そろったというのに、11月17~23日のコメの平均価格は5キロあたり4312円と過去2番目に高い水準を記録している。そこで食費の負担を減らすべく国が提案する一例が「お米券」だが、「絶対にお米券は配らない」と断言するのが大阪府交野(かたの)市の山本景市長だ。後編では、山本市長やその他の専門家に取材し、お米券が実際に機能するのかどうかなどについて徹底検証を行う。
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