“暗闘”続きで揺らぐ「習近平」体制…中国が高市首相の“答弁”に異常な反発を示す理由 専門家は「“反日”で団結するために利用している」と解説
張氏の後ろ盾
これは一種の“サボタージュ”と言えるかもしれない。人民解放軍は台湾侵攻に否定的であり、わざと中央軍事委員会のポストを空席にすることで“戦争反対”の意志を示しているのか──。
「習主席の側近と称された軍幹部も相次いで失脚しています。9月には抗日戦争勝利80周年の記念パレードが実施されましたが、執行指揮官が無名の中将で専門家の関心が集まりました。その後の公式報道で韓勝延中将だと判明しましたが、中将が、それも空軍の司令員である韓中将がパレードの指揮を執るのは異例中の異例です。これで“習派”の軍人が少なくなっていることが浮き彫りになりました。そして“反習派”の軍人である張氏を元国務院副総の胡春華氏がバックアップしています。胡氏は元国家主席の胡錦濤氏の懐刀として知られ、二人に縁戚関係はないのですが、『胡』の苗字が同じなので胡春華氏は“小胡錦濤”と呼ばれています。その胡春華氏も習主席に反旗を翻し、張氏と行動を共にしているのです」(同・田中氏)
ご記憶の方もおられるだろうが、2022年10月に行われた中国共産党第20回全国代表大会の閉幕式で胡錦濤氏が係員に促され退席するという“異常事態”が発生した。
様々な憶測が流れたが、習主席と胡錦濤氏は不仲とされ、全国代表大会という晴れの場で退席させることで“世代交代”を鮮明にしたという分析もあった。
これが事実であれば、胡春華氏が習主席を恨んでいても不思議はないわけだ。張氏を支援するのも理解できる。
高市首相の発言
「大手新聞社やテレビ局の報道だけでは、習主席の政治基盤は盤石のように感じられるかもしれません。しかし実態は異なり、今も習派と反習派は大規模な暗闘の真っ最中なのです。そのことは高市首相の『存立危機事態』答弁に中国が猛反発していることからも浮かび上がります。本来であれば、高市首相の発言にあそこまで中国が報復措置を取るはずがないのです。権力基盤が揺らいでいる習派にとって、高市首相の発言はまさに“千載一遇のチャンス”でしょう。日本を敵視して中国国民が反日で団結すれば、自分の政権が脅かされるリスクは減少します。そこで次々と日本に対する報復措置を発表しているわけです。それほど習派は危機意識を持っているのだとも言えます」(同・田中氏)
もともと中国の国家主席の任期は「連続2期10年まで」と定められていた。ところが習主席は規制を改め、異例の3期目に入っている。
党総書記としては2027年に、国家主席としても2028年に任期満了を迎える。習主席は今後も4期、5期……と“終身国家主席”を目指すとされ、そのためには大きな成果が必要だ。それには台湾統一が最も理想的だという分析から、「2027年か28年に中国は台湾に軍事侵攻する可能性が高い」と予測する専門家もいる。
逆に反習派にとっては2027年か28年に習主席を実質的な引退に追い込むのがベストの展開であり、そのために暗闘が過熱しているという。
第1回【今年8月に「習近平国家主席」の警護部隊と「人民解放軍」のエリート部隊が“衝突”か…専門家は「9月にはクーデター寸前の動き」も指摘】では、中国の中心部「中南海」で軍が警察を機関銃で殲滅するという、衝撃的な軍事衝突の詳細を報じている──。
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