千葉の公立中で「塾講師」が教えたら全教科で“想像を超える”結果が…「日本版サプライティーチャー」で最も効果が期待される「教科」とは
テストの点が全教科で全国平均以上に
補習を塾講師がしている間、教員は会議をしたり、研修や次の授業の準備をする時間に活用できる。また、学力向上にも効果があった。特に中学校では、昨年度、塾講師配置後の全国規模のテストにおいて、全ての教科で全国平均を上回った。
塾講師側からは、「塾での指導と学校での教え方が違うので、学校の先生の指導法から学ぶものがある」と好意的な意見が多い。授業と連動しているので、普段の授業中の様子が見られ、補習もやりやすい。
塾講師は、初めて会う児童生徒の名前や顔もすぐに覚え、コミュニケーション面での戸惑いはない。学校の教員も、塾の指導法を取り入れることができ、相乗効果がある。アンケートを取ると、児童生徒にも好評だ。
「学校の教員とは違う裏技を教えてくれるので、分かりやすかったという感想がありました。また、丁寧に教えてくれるので算数が好きになった、という声も。教員ひとりだと1時間の授業の中で30人全員を支援することは難しいですが、塾講師が授業支援に入ることで細かく見てもらえる。算数、数学は学年が上がるにつれて学力差が表れやすい教科です。できる子にも、つまずいている子にも個別に支援するには、複数の目があるのは効果的だと感じています」(吉村主幹)
千葉県内には小中校は900以上あり、全て県の予算でこの事業を行うのは不可能だという。そのため、地域にある塾などを活用して学力を上げるためのモデル事業として、予算や課題、メリットを市町村に提供している。
塾講師の活用は、教員の働き方改革につながるのか。例えば今、教員の負担を減らすため、部活動の地域移行や短縮授業、運動会のスリム化など様々な試みが全国で進んでいる。吉村主幹によると、この事業は働き方改革を目的としているものではなく、あくまでも児童生徒の学力向上を目的に、民間人材を活用しているとのことだ。
吉村主幹は、「デジタルコンテンツ、学習教材も充実させながら、塾や地域の人材を活用して、公教育の中で学力を高めていきたい」と強調する。
近年、中学受験が過熱傾向にあり、多くの子が塾に通っているといっても、学校を頼りにしている家庭がまた多いことも忘れてはいけない。物価高が続き、経済的に苦しい家庭や、共働きで子どもの教育に手をかけられない家庭もある。教員の人材不足の中、児童・生徒の学力向上のためにも外部人材の活用が期待される。
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