【べらぼう】蔦重の時代の黒幕中の黒幕 生田斗真演じる「一橋治済」はどこまで悪人だったのか
裏で糸を引き続けた究極の悪役
多くの歴史上の人物が交錯したNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢話~』だが、1年間を通して暗躍し、背後で時代を大きく動かす人物として描かれたのは、生田斗真演じる一橋治済だった。
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10代将軍家治(眞島秀和)の世継ぎの家基(奥智哉)や老中首座の松平武元(石坂浩二)が急死したときも、平賀源内(安田顕)が入獄したときも、田沼意次(渡辺謙)の嫡男の意知(宮沢氷魚)が惨殺されたときも、家治がにわかに病に倒れて死去したときも、常に治済が背後で糸を引いているように描かれてきた。結果として、嫡男の豊千代を11代将軍家斉(城桧吏)にし、自身は将軍の父として隠然たる力を振るい続けた。
いわば究極の悪役が治済だった。視聴者も上に記した人物に思い入れがあればあるほど、彼らが死去するたびに、治済への恨みを募らせたのではないだろうか。そこで、史実の治済には、こうした暗躍や陰謀の「疑い」がどこまであるのか考察したい。
伏線の回収はやりすぎだが
ドラマの上では、視聴者が溜飲を下げる展開が最後に仕掛けられていた。松平定信(井上裕貴)や元大奥総取締の高岳(冨永愛)、田沼意次の側近の三浦庄司(原田泰造)、火付盗賊改方の長谷川平蔵(中村隼人)らが、いずれも同じ治済を敵としていると気づき、一致団結して討ち滅ぼそうと画策し、そこに蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)も無理やり誘い込まれた。
まず、芝居町の祭典である曽我祭に治済をおびき出し、浄瑠璃小屋に引き入れて討ち果たそうとたくらんだ。第46回「曽我祭の変」(11月30日放送)では、事前に治済に察知されてしまい、逆に毒まんじゅうを食らわされ、関わった何人かが命を落とすことになった。しかし、第47回「饅頭(まんじゅう)こわい」(12月7日放送)では奇策を講じ、ついに治済を捕らえ、遠くの島に送ってしまうようだ。
年間の放送を通して、治済がさまざまな事件を背後で操るのを暗示させ、その伏線をこうして一気に回収する脚本家の手腕はなかなかのものだ。しかし、実際の歴史はミステリーやサスペンスではないから、伏線が都合よく回収されるものではない。一橋治済は蔦重が死去し、松平定信が中央政界から完全に退いたのちも、隠然たる力を振るい続けた。それが替え玉であった証拠はないとはいえ、筆者には『べらぼう』の展開には「やりすぎ」の感が否めない。
だが、ここにいたるまでの治済の「暗躍」に関しては、疑いが濃厚なものが多い。
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