【香港火災】疑惑だらけ「防護ネット」 防炎基準を満たすものは低層階、それ以外は上層階に…「竹の足場」をスケープゴートにする“利点”の指摘も
ボランティア排除に2つの側面
香港郊外・大埔(タイポー)の高層団地「宏福苑」の火災は、12月3日で発生から1週間が過ぎた。この日、7棟の捜索を完了した香港警察の発表によると、死者は159人(身元確認待ちは19人)、行方不明者は31人となった。
【写真】窓の外に発泡スチロール…「工事と管理のトラブル」を報告していた団地住人のSNS投稿
被災者救済の動きは火災発生当日から活発となり、民間ボランティアの迅速な対応も好意的に報じられていた。逆風が吹いたのは28日、香港当局が組織した救援チームとの“交代”が始まった頃だ。香港警察の“撤収”命令などを巡り、海外メディアが「政府批判を警戒か」などと報じる一方、香港では詐欺防止の観点から、複数団体が入り乱れてのボランティア活動は整理が必要と見る向きもあった。
29日午後、中国政府の出先機関である国家安全維持公署は「災害を利用して香港を混乱させる反中・扇動分子を法で処罰する香港政府の取り組み」への支持声明を発表。香港国家安全維持法(国安法)事件を担当する香港警察の国家安全処は、騒乱や政府に対する憎悪を「扇動」した容疑で、3日までに少なくとも3人を逮捕した。
逮捕者の1人は、オンライン署名サイト「宏福苑火災注目グループ」の発起人とされる大学生。このサイトは被災者救済や政府の責任追及を求める「四大要求」を掲げており、香港デモの「五大要求」を想起させると注目されていた。
もう1人は元区議員だが、香港メディアの報道によれば、個人のSNSに国安法違反にあたるような投稿は見当たらないという。3日夜に逮捕が報じられたYouTuberは、動画内で火災の犠牲者に対するヘイトスピーチを行ったとみられている。
「竹の足場犯人説」は下火に
ボランティア活動以外にも、2日午前には「香港高層ビルメンテナンス政策」についての民間の記者会見(討論会形式)が突如中止となった。予定されていた議論テーマには、被災者支援、政府調査委員会の設置、工事および資材の不正問題、政府部門による工事監督の実態、大規模修繕と囲い込み入札の問題など、現在の香港で注目されているポイントが並んでいた。
香港メディアも盛んに報じているのは「工事および資材の不正問題」だ。これは竹の足場を“悲劇の主因”とする「犯人説」にも関連している。
宏福苑火災が発生した11月26日、海外報道で「竹の足場犯人説」が大勢を占める一方、香港では猛反論が巻き起こった。その下地は2025年3月、香港当局が「公共工事の新築案件は50%以上を金属足場にせよ」というお達しを突然出した一件などがある。この時に相次いだ指摘は、金属足場への移行には外国人労働者と中国内地製建材の流入を増やす意図があるというものだった。
そのため宏福苑火災では、11月27日に香港政府が金属足場への移行ロードマップの推進を発表すると、巷で「竹の足場スケープゴート説」が熱を帯びた。元政府高官を含む識者は相次いで意見を表明。移行するにしても、竹の足場の規則の見直しや検証、建設業界へのヒアリングなど手順を踏むべきだといった内容には、やはり急激な移行への懐疑心がのぞいている。対して、海外メディアに「竹の足場犯人説」を語った大学教授は発言を撤回し、謝罪に至った。
「竹の足場犯人説」が一旦は収まりつつある一方、ますます注目されているのはもう1つの“犯人候補”である。宏福苑以外の工事現場でも大量に使用されている「防護ネット」だ。
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