要介護の義母を引き取り、言いなりで世話を続ける妻… “がんばり屋”だと思っていた彼女の恐ろしすぎる真実

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“悪化”する妻の態度

 母と娘の間に特別な感情があったのか、あるいは娘が母に対して一方的な思いを抱えていたのか、当時の良輔さんにはわからなかったが、優佳さんに反対することはできなかった。

「ただ、そのうち介護が本格的になってきました。義母は娘を顎で使い、優佳はそれに唯々諾々と従っている。高齢者がわがままになるのはわかるけど、優佳はむしろそのわがままを助長しているように見えました。ヘルパーさんも来ていたけど、義母はひどいことを言って帰しちゃったりするんですよ。優佳はひとりで奮闘していたようです。そのうち娘が家を出て行きました。もうどうにもならないだろ、施設に入れようと言っても優佳は首を横に振る。家の中はごちゃごちゃになり、いつでも嫌な臭いが漂っている。さすがに僕がケアマネージャーに連絡をしたんですが、優佳は『私が最後までめんどうを見るから』と言い張る」

妻の告白

 今の状態が義母のためだとは思えないと、ある日、良輔さんは優佳さんに話しかけた。優佳さんは「母のためじゃない、私のため」とつぶやいた。優佳さんは、実はずっと母親を恨みながら生きてきたと初めて告白した。だから最後は復讐してやりたかったと。

「めんどうを見ているようで見ていなかった。義母にあまり食べさせてもいなかった。これじゃ虐待だからとケアマネージャーを呼んで、すぐに施設に入れる手続きをしました。こんなに長い間、恨みを募らせ、復讐の機会を狙っていた妻が怖かった」

 あんたも私を裏切ったよねと、優佳さんは良輔さんに迫ってきた。優佳さんは20歳の子を妊娠させたことを知っていた。

「こんな変態を夫にもったなんて、本当に恥ずかしかった。まったく、どいつもこいつも、私のことなんてどうでもいいのよ。私にだけ大変な思いをさせて、私のことを下に見て、と妻は怒り狂いました。そのあたりのものをバンバン投げてきて泣き叫んでいた。長い間の我慢が一気に爆発してしまったように見えた」

「私の歪みにちっとも気づいてくれなかった」

 優佳さんの母は、若いころよく男性を家に引っ張り込んでいたのだという。家に帰っても男がいると「外で遊んでおいで」と言われる。父親に言いつけてやろうと思ったが、父にも女性がいることがわかった。それなのにふたりは離婚しようとせず、幼い優佳さんだけが心配したり気を揉んだりしながら成長していった。

「私はものすごく歪んでいる。そうなったのは親のせい。そしてあなたは私の歪みにちっとも気づいてくれなかったと、優佳は泣いて叫んだけど、僕から見たら彼女はがんばりすぎる優秀な女性にしか思えなかった。言いたいことがあるなら、もっと言ってくれればよかったのにと言ってももう遅いですよね」

 ふたりとも、ずっと気持ちも価値観もすれ違ったまま生活してきたのだ。その虚しさに気づいて脱力した。もう一緒にいる意味もないと感じ、どちらからともなく離婚の話になった。

「離婚するのもエネルギーがいりますが、ふたりともそのエネルギーがない状態ですね。妻は僕の浮気が原因だと言うし、僕はあの介護生活に耐えきれなかった。あの時点で妻は結婚生活を放棄したと思っている」

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