平均6億円超の乃木坂タワマンが即日完売 異変は2010年代から…都心マンション価格を狂わせる“競争相手”とは
富裕層にとっては円安下の「資産防衛」の側面も
円安の効果は、外国人のマンション需要という点でも表れている。東京都の統計データによれば、東京23区における外国人人口は、2020年1月1日時点の48万5967人から2025年1月1日時点の60万5506人へと24.5%増加。文京区は約36%増、中央区は約48%増と都心部の外国人居住の増加が顕著になっている。中華圏のファミリー層は、教育に対する意識が高く文京区や新しい街づくりが進む東京湾岸エリアの人気が高い。共用施設の充実した大規模マンションやタワーマンションを好む傾向もある。
東京駅周辺や高輪ゲートウェイ駅周辺など東京都心・臨海地域では、高輪ゲートシティの開業など大規模な再開発が進む。東京都は、アジア地域の業務統括拠点や研究開発拠点の集積を目指し、新たな外国企業を誘致するアジアヘッドクォーター特区を設けるなど外国企業の東京進出に力を入れている。渋谷、新宿、池袋を含んだ東京都心・臨海地域は、この特区に指定されている。また、「世界で一番ビジネスがしやすい環境」を創出することを目的に2013年に法制定された国家戦略特区制度も都心の再開発を後押しする。
都心のマンション価格の高騰は、インバウンド需要の拡大、デフレからの脱却を図るアベノミクスによる金融緩和による円安、アジアヘッドクォーター特区や国家戦略特区などによるグローバル企業の誘致の成果であり、政策効果実現の結果ともいえるだろう。福岡や大阪などインバウンド需要が大きな都市のマンション価格も大きく上昇しているが、似たような要因と思われる。近年は、ビジネスホテルよりも広く収益性が期待できるアパートメントホテルの開業も目立ってきている。
マンション分譲事業を展開する野村不動産は、2025年10月に全客室新宿御苑ビューの「ノーガホテル新宿御苑 東京(仮称)」を着工した。マンションにもふさわしい立地でホテルとの用地取得競争は、今後も続きそうだ。
好調な都心マンション市場だが不安点もある。まず挙げられるのが金利の上昇だ。直近でも10年物日本国債の金利が1.8%を上回り30年物日本国債の金利は、3.3%超とこの1年で大きく上昇している。低金利がマンション市場を支えていただけに、政策金利が引き上げられれば売れ行きに影響するかもしれない。また、何らかの事情で外国人投資家などのインバウンド需要が落ち込めば、販売に影響が出てくるだろう。一部の中古タワーマンションの中には、売れ行きが鈍化し流通在庫が増えている物件もある。
通貨安に見舞われた国の多くは、住宅価格が上昇している。円安に歯止めが掛かっていないなかでの都心のマンション購入は、潤沢なキャッシュを持つ富裕層にとっての資産防衛の側面もあるのだろう。とはいえ、過大な借り入れによるマンション購入は、金利上昇リスクがある。価格が上昇を続ける都心のマンションだが資産ポートフォリオや支払い能力を踏まえてよく検討すべきだろう。






