平均6億円超の乃木坂タワマンが即日完売 異変は2010年代から…都心マンション価格を狂わせる“競争相手”とは
かつて存在した訪日への「3つの壁」
2024年3月に日鉄興和不動産が滞在型のレジデンシャルホテル「&Here TOKYO UENO」145室を上野の不忍池近くに開業したが、予約状況は好調で宿泊客の9割は外国人だという。2025年11月に政府観光局から発表された2025年10月の訪日外客数は389万6300人で、前年同月比では17.6%増。前年の331万2193人を58万人以上上回り、同月過去最高を更新。1~10月までの訪日外客数は、3554万7200人で対前年同期比17.7%増加。2025年の訪日外客数4000万人も視野に入ってきている。
観光立国推進基本計画(第4次)において、2030年までに6000万人を上回ることを目指しているが、2003年の訪日外客数はわずか521万人だった。2003年は、訪日外客数を増やし、日本の観光消費を促進するための官民連携のキャンペーンである「ビジット・ジャパン事業」が始まった年。訪日客向けのプロモーションなどの予算を確保し、観光需要を喚起。2010年には、羽田空港を再国際化し都市へのアクセス性も高めた。2013年には、訪日外国客数が1000万人を突破し2016年には、2400万人超えた。
外国客数が年間1億人を超えるフランスや8000万人を超えるスペインなど世界と比較すると日本の訪日外客数はまだ少ない。しかし、上位2か国の入国ルートの多くが陸路であるのに対し、海に囲まれた日本は、海路か空路しかなくそのことを思えば政策効果は十分に発揮されている。また、LCCとよばれる格安航空会社が普及したことも訪日外客数の増加に大きく寄与している。
外国から日本に来るのに際して、かつては海の壁のほかに「2つの壁」があった。1つ目は、日本語という言葉の壁。これは、電車などの標識の外国語対応に加え、スマートフォンで簡単に地図検索や翻訳ができるようになり壁は小さくなった。外国人に人気の大阪の商店街を歩くと、聞こえてくるアナウンスは、外国語の方が多い。
もう1つが円の壁だ。総合的な為替レートの変動をみるための指標である名目実効為替レート指数は、2011年頃をピークにアベノミクスが始まった2012年以降に大きく下落。ドルだけでなく、元やニュー台湾ドル、シンガポールドルなどアジア主要国の通貨に対しても大きく下落している。
海の壁、言葉の壁、円の壁が小さくなった今、インバウンド需要は活況だ。筆者は、今年の秋に兵庫県の城崎温泉を訪ねたが浴衣姿で歩いている半数程度は、外国人だった。大阪国税局が発表した関西2府4県の2025年1月1日の路線価における上昇率トップは、兵庫県豊岡市のJR城崎温泉駅前の24.2%。インバウンド需要の拡大は、地価にも影響している。
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