「マル暴刑事」まで懐柔する“違法スカウトグループ”を躍進させた「日本社会の根本的問題」…夜の繁華街は「もはやスカウトなしでは維持できない」の声も

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今後の展開はどうなるのか?

 ほかにも、スカウトというビジネスがどこまで合法で、何をしたら法に抵触するのかは厳密な検討を要する問題ではある。しかし、一般的にはギリギリ合法、つまりは「グレー」の範疇にあると見なされてきたからこそ、ナチュラルも警察の目に留まらずに組織を拡大できたのだろう。

 むしろその勢いは、警察より先にヤクザと激突した。新宿・歌舞伎町で2020年頃、「スカウト狩り」と称して襲撃を繰り返したヤクザ組織と、ナチュラルが抗争になった事実は広く知られている。暴力団対策法や暴排条例による監視と統制が強まったとはいえ、夜の繁華街で、ある種の利権が寡占状態となれば、おのずとヤクザの介入を招くということだろう。だからこそ、ナチュラルのように、暴力性の強い半グレが主導するスカウトグループが、一大勢力を築くことになったのかもしれない。

 それでは今後、警察の取り締まりと法規制、ヤクザとの衝突により、スカウトグループは衰退していくのだろうか。それは成り行きを見守るしかないだろうが、ひとつ言えるのは、スカウトの勢力拡張の背景となった社会情勢は今後も変わらないということだ。

「クラブやキャバクラの主な客層が30歳~60歳くらいだとすると、その世代の日本の男性人口は2025年4月現在で約2800万人。これに対し、20歳~35歳の女性は約1300万人と半分以下なんです。20歳未満の女性人口となると、1000万人を切っている。最近は60代、70代でも元気に飲み続ける男性も多いので、客は増えるのに店側の人材は減っていく状況になる。近い将来、繁華街の『飲みの文化』がどうなっているかわかりませんが、今とあまり変わらないなら人材の需給ひっ迫は続くことになるでしょう」(前出・A氏)

 スカウトグループの増殖を助けてきた“土壌”が維持される限り、力業だけで追い込んでいくのは難しいのかもしれない。

久田将義/編集者。主な著書に『特殊詐欺と連続強盗』(文春新書)、『生身の暴力論』(講談社現代新書)など。「TABLO」編集長。

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