「マル暴刑事」まで懐柔する“違法スカウトグループ”を躍進させた「日本社会の根本的問題」…夜の繁華街は「もはやスカウトなしでは維持できない」の声も

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警察と反社、癒着の実態

「何十年も、真面目にこの部門一筋で来たので、怒りと無念で一杯です」

 あるベテラン捜査員は、声を絞り出すようにこう語った。警視庁暴力団対策課の警部補、神保大輔容疑者(43)が、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)として捜査対象になっていたスカウトグループ「ナチュラル」に、監視カメラ情報を漏らしたとして、地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕された事件のことだ。

 同じ警察官として、神保容疑者の背信行為への怒りがどれほど大きいかは想像に難くない。しかし、この捜査員は同時に、トクリュウをなかなか追い込むことができない自分たちの現状にも、いらだちを感じているという。

「うちの管内でも、トクリュウの摘発事例は少なくありません。しかし、組織の全容解明が困難なのも事実。そのため歴史ある暴力団対策部門が、解体的再編を余儀なくされているほどです」

 神保容疑者の事件を受け、世間では「警察官の不良行為」に注目が集まっている。一方、一部の捜査員や暴力団関係者らは、改めて「トクリュウの手強さ」に舌を巻いている。関西の暴力団と近い“事件屋”の男性は、「(神保容疑者の)自宅から、何百万もの現金が出てきたんやろ? 今どき捜査情報を受け取ったくらいで、そんな大金を渡すなんかヤクザでも珍しい」と話す(注・自宅から約900万円の現金を押収)。

 また、ある暴力団幹部もこう語る。

「警察との癒着はほかにもある。しかし、大掛かりなシャブの密輸や、相当な大物幹部に対する捜査情報でもない以上、数百万円もの報酬を渡すことはないんじゃないか」

 警察と暴力団の癒着とは、どのようなものだろうか。都内に事務所を置く指定暴力団三次団体組長は「癒着はある」とあっさり言う。

「例えば、裏スロ(裏スロットの意味)に“何日にガサが入る”という情報を流して礼金を受け取っているケースもある」

 別の指定暴力団二次団体幹部は、

「地方に行くと、さらにこういったケースは多いだろうね。ガサ入れの他、誰に逮捕状が出ていると教えてくれたりする。それで、小遣いを貰うマル暴(暴力団対策部の警察官)もいるが、我々から見てもあさましいね」

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