「マル暴刑事」まで懐柔する“違法スカウトグループ”を躍進させた「日本社会の根本的問題」…夜の繁華街は「もはやスカウトなしでは維持できない」の声も
スカウトグループが躍進した背景
神保容疑者の自宅で発見された多額の現金は、現時点ではナチュラルから受け取ったものであると証明されたわけではない。だが、仮にそうならば、ナチュラルの資金力が並みのヤクザに勝っていることを改めて示唆している。
これについて、経済事件にも詳しい金融紙記者のA氏は「時流に乗った商売をしているグループは強い」のだと語る。
「不動産が暴騰しているときには地上げ屋が、株式市場のバブル期には仕手筋が強い。日本経済が下り坂になって自己破産者が増えると、ヤミ金融が猛威を振るった」
では、ナチュラルはどのような“時流”に乗っているのか。それは「少子化」だと言う。
「日本経済を見渡してみてください。どこもかしこも人手不足です。キャバクラなど、夜のお店の場合は、稼働する女性に『若くて容姿の優れた』という条件が付くから、対象者は少なくならざるを得ない。また、一昔前には、『飲酒させない』というタテマエで、十代の女性を雇っている店もありましたが、警察の取り締まり強化もあり、そういうケースは激減した。採用環境は日に日に厳しさを増しているのです」
さらには“他業種”との競争もある。キャバクラと異なり、風営法の規制対象とならないため、長時間の営業が可能で、比較的少額の投資で開業が可能なガールズバーが雨後の筍のようにできている。さらには「ギャラ飲みアプリ」の普及で、時間と店舗に縛られない働き方が一般化してしまった。
特に競争の激しい大都市の繁華街では、キャバクラはスカウトグループの助けを借りなければ、もはや営業を維持できなくなっているとすら言える。
組織内でのリンチや暴力団との抗争、未成年の女性へ違法行為などの強要といった違法行為が取り沙汰されるスカウトグループだが、そんなことばかりしていては商売として成り立つはずもない。
地方都市から数年前に上京し、複数のキャバクラ、銀座のクラブで働いた経験のある女性は、「スカウトを通さずに入店したことは一度もない」としたうえで、こう語る。
「スカウトを通さないと、複数の店の条件を比較するのも難しいし、店とトラブルになった際に話の持っていきどころもないじゃないですか」
スカウトは紹介先の店から、女性の売上の一部を「スカウトバック(手数料)」として継続的に受け取ってきた。その相場は売上の15~20%で、その店で紹介した女性が働き続ける限り支払われる「永久バック制」が主流だ。はた目には高額にも思えるが、前出の女性は「納得できる額だった」と語っている。
最近の法律改正により、風俗店などがスカウトに支払う「スカウトバック」は禁止されるようになったが、口頭での取り決めや個別の契約に基づき支払われるケースはなおも存在するという。それも、店と女性、スカウトの三者に「相互依存」がある実態を物語っている。
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