裏社会の先輩から「役者になれば」と… 苦労人・仲代達矢さんのデビュー秘話 勝新太郎との決裂、和解の裏側は? 「二人は涙を流して抱き合った」

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「誰よりも早く現場に来て、誰よりも姿勢よく椅子に腰をかけて……」

 大ヒットした国民的“犬”映画の主演も彼である。

「仲代さんが出演してくださることで、作品が骨太になり、風格が備わります。『ハチ公物語』(87年)は製作当初から、仲代さんの主演はマストで、監督よりも先に決まっていました」

 そう明かすのは「ハチ公物語」のプロデューサーを務めた奥山和由(70)。

「仲代さんは誰よりも早く現場に来て、誰よりも姿勢よく椅子に腰をかけて、出番を待っていらっしゃる。この映画には、仲代さん演じる主人公が、秋田犬と一緒に入浴しながらはしゃぐシーンがあった。監督は“こんなシーンを仲代さんにお願いしていいものか……”と困惑していましたが、まったくの杞憂で、生き生きと演じてくれました」(同)

 同作ならではの苦心談も。

「秋田犬が思うように動いてくれるまで、かなり時間がかかったんです。そのぶん、待ち時間も長引くわけですが、仲代さんは文句ひとつ言わず、むしろ士気を高めてくれる。プロデューサーとして、見えないところでも仲代さんに助けられた恩を感じています」(同)

 かくも枚挙にいとまがない映画出演をこなす一方で、舞台もまた主戦場だった。

 後編【「僕は役者としてこの世で一番下手」 仲代達矢さんの謙虚な素顔 「朝8時撮影開始でも4時には現場に」】では、関係者が口をそろえる仲代さんの謙虚な人柄などについて詳しく報じる。

週刊新潮 2025年11月27日号掲載

特集「追悼 仲代達矢 秘話で綴る役者人生73年」より

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