「高市総理はブレないで」 国境の島・与那国町前町長が明かす”本音“ 「高市答弁」は本当に問題なのか?
【前後編の後編/前編からの続き】
台湾有事を巡る高市早苗首相(64)の国会答弁をめぐって、中国側の“報復”が相次いでいる。日本への渡航や留学に自粛を促し、日本産水産物について事実上の輸入停止を通告したのに加え、中国商務省の何詠前報道官は、日本側が高市首相の答弁を撤回しなければ「断固として必要な措置を取る」と追加の報復措置にも言及した。こうしたなか、日本でも野党や大手メディア、一部のジャーナリストが批判の論陣を張っている。では、一国の総理に対して、他国の総領事が「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやる」と言い放つ、過剰かつ扇動的な言動に日本はどう対峙すべきなのか。中国情勢や安全保障に明るい外交当局者、識者、さらに台湾有事に危機感を募らせる国境の島の首長たちに、高市首相の答弁についての考えを徹底取材した。
***
【実際の写真】玉木雄一郎氏は「ハエ」麻生太郎氏は「サイコパス」 “高市たたき”をした中国総領事のトンデモ発言集
前編【〈敗戦国には原爆を5発落とせばいい〉 中国で吹き荒れる日本への暴言 「駐大阪総領事は“ツイ廃”と揶揄されるほどのSNS中毒」】では、中国で吹き荒れる日本バッシングについて報じた。
「存立危機事態の答弁については、高市総理は誰もが考えていた当たり前のことを普通に言っただけ。問題だと憤る指摘がありますが、全く理解できません」
と話すのは、外務省時代に外務事務次官、駐米大使を歴任した杉山晋輔氏。
「『存立危機事態』とは、国際法上の集団的自衛権を行使する事態のことです。日本が武力攻撃をされているわけではないけれど、わが国と密接な関係にある他国が攻撃されることで、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される。そうした明白な危険がある場合に限り、自らはやられていなくても助けていいというもの。これを日本は国内法で規定しています」(同)
杉山氏が外務審議官だった2015年、安倍政権下で成立した安保法制で、初めて盛り込まれた概念だった。
「その当時、国会の法案審議でも具体的にどのような事態を指すのかは随分と議論になりましたが、政府は『事態を総合的かつ客観的に判断する』と答弁するだけにとどめていました。ところが、高市さんは首相として初めて公式の場で台湾有事を例に答弁した。そのことが批判されていますが、役人が書いた木で鼻をくくったような答弁、いわゆる“木鼻答弁”をせず、一般国民にも分かる言葉で説明したのだと思います」(同)
「普通の人でも、そう考える」
杉山氏はこうも続ける。
「役人が書いた答弁は何を言っているのかよく分からないでしょう。それに対し高市さんは具体例を挙げながら、当たり前のことを言ったに過ぎません。日本の最西端・与那国島の目と鼻の先にある台湾で何かが起きたとします。直接自分に銃が向けられて殺されるわけではないにしても、お隣でそのような事態が起きていたら、いつ自分に火の粉が降りかかってくるか分からない。全然知らん顔をして関係ないなんてことにはならない。普通の人でも、そう考えるのではないでしょうか」
安倍政権下で官房副長官補として安保法制制定に携わった兼原信克氏も、
「台湾有事が『存立危機事態』になるというのは、当たり前も当たり前のことで、高市総理の答弁は妥当なものでした。日本からすれば、朝鮮半島や台湾における有事が脅威となるのは当然。北朝鮮が暴発したら日本への核の恐怖はありますが、まず米韓同盟が機能する。ところが、台湾有事は日本が最前線になってしまうわけです。与那国島は台湾から110キロ、中国本土から250キロしか離れていません。いざ有事となれば、中国から中距離弾道ミサイルが飛んできて、機雷がプカプカと流れ込んでくるかもしれない。日本が安保法制を作った理由はそこにあって、中国が台湾有事を起こすことを抑止する。それこそがわが国の安全保障上、今世紀最大の課題なのです」
与那国町前町長は「高市総理には毅然とした態度を貫いてほしい」
国境の島に住む与那国町前町長・糸数健一氏が言う。
「天気次第では、肉眼で見えるほど台湾に近い島なんです。日本の国土を守るためにも、高市総理にはブレることなく毅然とした態度を貫いてほしい。中国に野蛮なことをやめるよう主張してくれないと困ります」
与那国島を含む八重山列島で、最大の人口を誇る石垣市の中山義隆市長は、
「尖閣諸島を含む石垣市からすれば、もし台湾周辺で何らかの武力行使が起きると海上封鎖が行われ、食料やエネルギーが途絶えるのではないかという危機感があります。万が一の時には、石垣市や与那国町、竹富町、宮古島市、多良間村の住民らが九州・山口県へ『島外避難』する計画を政府主導で策定中です」
日頃から国境を意識して暮らす島民にとって、有事は真に他人事ではない。
[1/2ページ]




