「幼馴染は白い怪物に食べられてしまったに違いない」中2少女の衝撃の告白 神隠しにあった14歳の行方は【川奈まり子の百物語】

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【前後編の後編/前編を読む】原宿に来た2人の家出少女 雑踏で“白い手”に肩を触られ…翌朝、ホテルから幼馴染は消えていた

 これまでに6,000件以上の怪異体験談を蒐集し、語り部としても活動する川奈まり子が世にも不思議な一話をルポルタージュ。

 中学2年生の少女・リナと穂乃花は仲のいい幼馴染だ。ある時、リナは祖母のタンス預金を盗んで穂乃花とともに深夜バスに乗り、東京への家出を決行した。原宿・竹下通りの雑踏でリナは何者かに腕をつかまれ、異国の言葉で話しかけられる。その翌朝、宿泊先のビジネスホテルからリナは忽然と姿を消してしまう。7年後、大学生となった穂乃花は著者のもとを訪ね、不気味なことを語り始めた。「リナは白い怪物に食べられてしまったに違いない」と――。

***

「私、リナが化け物に呑み込まれるところを目撃したかもしれないんです」

 ――中学生の彼女とリナが東京のホテルに泊まった夜に時間を戻そう。

「あれ? リナ、もうお風呂から出たの?」

 先にバスルームに入ったリナが、ものの5分で出てきたので、穂乃花は意外に感じた。

 リナは毎日シャンプーすると小学生の頃から言っていたし、綺麗な髪が自慢で、腰に届きそうなロングヘアだったからだ。

 穂乃花は昔からショートヘアだったが、あれだけ長い髪なら、洗ってリンスして、軽くタオルドライするだけでも、5分以上かかりそうなことぐらいは見当がついた。

「うん。なんだか、鏡が怖くて」とリナは彼女に答えた。

 見れば顔色が冴えない。風呂上りとは思えないほど、血の気が引いている。
 
 原宿の雑踏で肩を叩かれて何か囁かれたと訴えてきたときから、なんとなく元気がないような気がしていたのだが、まだ引きずっていたのか……。

怯える

「さっき見たけど、ふつうの鏡だったよ?」と彼女はリナに言った。

「……白い手みたいなものがチラッと鏡に映った感じがして、気のせいだと思ったんだけど、シャワーを浴び始めたら、ブツブツ何か言う声が、どこかから聞こえたから……」

「もう! そういうの、やめよう!」

 幸いなことに、そのときちょうどテレビでリナの好きなバラエティ番組が始まった。

 ベッドに腰かけて番組を見はじめたリナを置いて、彼女はシャワーを浴びに行き、戻ると一緒に談笑した。

 それなりに愉しい時間を過ごしたわけだが、リナのようすは、まだどこかおかしかった。

 本来、穂乃花よりリナの方が良く言えば活発、悪く言うと乱暴で、野性的なエネルギーに満ち溢れているたちなのだ。

 祖母のタンス預金を盗んだのも、家出を先に思いついたのも、リナである。

 今日に限って、白い手が云々、声が云々と、何かオバケでも見たかのように怯えているけれど、ホラー映画や心霊動画が苦手だという話も聞いたことがない。
 
――家出なんかしたから、リナ、いつになく気が弱くなっているのかな?
 
 穂乃花はそう考えて、部屋はベッドが2つあるツインルームだったが、リナを誘って、同じベッドで寝ることにしたのであった。

 リナが窓側に、彼女が隣のベッドに近い側に寝そべって、長い時間、とりとめのないおしゃべりに興じるうちに、どちらからともなく眠りに落ちた。

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