「醜いなんて言わせない」 プラスサイズ女性への偏見をなくしたい…ビューティコンテスト優勝の49歳社長の戦い
言葉をポジティブに受け取る
大学では政策学を学び、卒業後は大手企業に就職。経営企画部をはじめ、さまざまな部署を経験し、着実にキャリアを積んだ。
30代半ばになり“ぽっちゃり友達”ができた。その交流を通じて、プラスサイズ女性たちの心の傷を知り、いじめが原因で社会的にドロップアウトしてしまった人、周囲からの心ない言葉に傷つけられ自己肯定感を持てない人もいることを知った。
「プラスサイズモデルなど自分の体型を活かした仕事をしている女性もいましたが、一見、自信に満ちているように見えて、一度はみんなその体型のために辛い思いをしていました」
プラスサイズ女性たちの問題を学んだYasukoさんに白羽の矢が立った。プラスサイズ専門のモデル事務所の代表にならないかという話が飛び込んだのだ。二つ返事で了承した。
会社の理念と目的は、プラスサイズ女性が能力を発揮して活躍できる社会にすること。その活躍を見たプラスサイズの若者をエンパワーすること、ひいてはプラスサイズに対する偏見をなくすことだ。
「人生も後半戦。自分自身が輝きたい気持ちより、次の世代が幸せに生きるために自分の経験や能力を活用して社会の役に立ちたいという気持ちが強くなってきた。いまは、ライフワークだと思って取り組んでいます」
このコンテストに参加して、ファイナリスト仲間がどんどん綺麗になってゆくのを見た。
「周囲の言葉をポジティブに受け取れば、人は変わることができる。そして外見とは、内面から溢れ出る美しさを相手に伝える大きな媒体だと気づきました」
ステージ上で輝く彼女たちの笑顔は、「自分らしく生きる」ことの尊さを、観客一人ひとりに伝えていた。
「誰かがやるのを待たない」
Today's Woman プラスサイズビューティコンテストを主催するのは、スティーブン・A・ヘインズさん。エンターテイナー、振付師、プロデューサーとして活躍するヘインズさんは、ビューティコンテストのトレーナーとしても、これまで4名の日本人女性を世界一に輝かせてきた。
そんな彼が、プラスサイズコンテストに関わったのはなぜか。
「たくさんの大会を経験する中で、いつも感じていたのは、日本には『美しさの基準がひとつしかない』ということ。みんな同じような体型、同じような見た目、同じようなスタイル。その“基準以外”の女性を認めることができないのはおかしい。そこを変えなければ……と強く思いました。誰かがやってくれるのを待つのではなく、自分が行動しようと」
コンテストの企画当初から、ヘインズさんは「プラスサイズ」という言葉を使っている。
「アメリカではこの言葉は、自分の身体を美しく表現する前向きな言葉。私にとっては、より大きな心を持つ、より多くを与える、より深く理解を分かち合う、という意味もあります」
しかし日本では当初、この言葉はあまり好意的に受け取られなかった。からかいの対象として受け取られたり、奇異に見られたり、どう反応すればいいのかわからない人も。
「コンテストを始める上で最も大変だったのは、『プラスサイズ』という言葉の本当の意味と、その背景にある"真の美しさ"を理解してもらうことでした」
5年が経った今、確かに変化を感じているとヘインズさんは語る。
「多くの女性たちが声を上げ、自分を信じ、正しいことのために立ち上がるようになってきました。正しいことのために立ち上がると、みんなが勝者になる。逆に、間違ったことや不誠実なことに黙ってしまうと、全員が後退します」
だからこそ、勇気を持って立ち上がる女性たちを本当に尊敬している。
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