18年ぶりに蘇る「ニライカナイ」 「再録音で改めて完成」INORAN、音楽好きの矜持
1997年にソロデビューし、2000年のLUNA SEA終幕後にソロで本格的に活動を始めたINORAN。2010年に「REBOOT」として再結集が宣言されたバンドと並行しながら、ソロとしてはこれまでにオリジナルアルバム15作をリリースしている。今年9月には、2007年に発売した名盤「ニライカナイ」を、信頼を寄せるメンバーとともに新たにレコーディングしたアルバム「ニライカナイ-Rerecorded-」をリリース。「音楽好きは誰にも負けたくない」という探究心の強さが、INORANを支えている。
(全2回の第2回)
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【画像10枚】インディーズ時代から終幕ライブ、「今」の姿まで…貴重カットでたどる「INORAN」の音楽人生
「知らない音楽があるのは悔しい」
現在は、ソロとバンドを並行し活動を続けているが、それぞれ別物と考えているという。
「焼酎しか飲まないぞ、という人をイタリアンの店に連れていけないじゃないですか。そういう、自分は絶対にこれじゃなきゃダメだという人とは、考え方が違うのかもしれませんね。僕の場合は、状況が変わればそれに合わせていく。一方、根本でやることは変わらない。自分がどういうムードを作り、出していくか、ですよ」
そして「世の中に知らない音楽があるのは悔しい」とも話す。
「音楽好きについては誰にも負けたくないんです。テクニックは別にして、音楽好きという面ではミック・ジャガーにも負ける気がしないですよ(笑)昔ならレコード屋でのジャケ買い、今ならYouTubeやサブスクリプションを通じて、いろんな音楽に出会いますよね。まあジャケ買いはだいたい失敗していたんですが(苦笑)。音楽との出会いはタイミングでもあり運命。サブスクだと便利だけど不幸でもある。探す手間に楽しみがあったりもするのに、サブスクでは聴きたい曲はすぐ見つかっちゃうし。逆にいい出会いもあったりするんだけどね」
知らない音楽に出会えば、そこで感性が刺激され、自身に取り込まれた後、また新たな音楽が創造されることにつながる。音楽の聴かれ方も変わってきている中で、「今がダメ」とは決して考えていないが、「豊かな時間が減っている」と指摘する。
「CDのブックレットをめくったり、昔だったらレコードをひっくり返したり、という合理的じゃない部分は減っていますよね。そういう豊かな時間を、ライブの雰囲気や熱を感じることで、自身でアジャスト(調整)してもらえればいいんだけどね」
再録音の意義
便利さと豊かさの両立は難しい命題だが、その点、かつて発売したCDを新たに再録音するという作業は、これ以上ない豊かな時間といえる。聴く側にとってもそれは同様だ。LUNA SEAとしても、インディーズで発売した1stアルバム「LUNA SEA」を、REBOOT後の2011年にセルフカバーで再録音。2023年にはアルバム「MOTHER」(1994年)とアルバム「STYLE」(1996年)をともに再録音でリリースしている。
「再録音をしてみたら、思いもよらぬ経験がいろいろできたんですね。最初のレコーディングでは思いを置き忘れた曲が、自分の中で改めて完成したりね。それは技術的なところではなくて、感情的な意味でね。自分の思いがタイムリープできる。それに聴く側にとっても、当時は子どもだったのでライブに行けなかったような人が、再録音をきっかけに当時の気分を思いだし、昨年や一昨年のツアーでライブに来てくれた、というケースもある。我々もそんな人たちの表情を見たり、思いをもらったりする経験ができた」
オリジナルを超える超えないの次元ではなく、再録音によってアルバムやその収録曲の「輝きをレストアできる」ことにも大きな意義を感じたという。
「それって凄いことじゃないですか。そうであるならば、ソロでもやりたいし、ソロの僕のファミリーたちにも届けたい」
「ニライカナイ-Rerecorded-」にはそんな思いが詰まっている。
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