「勝おじちゃんの愚痴や悪い話はひとつもなく…」 老人ホームで暮らす中村玉緒(86)が明かした“本当の思い” 「すっごく幸せやったんやで、と」

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【全2回(前編/後編)の後編】

 東京都北部にある老人ホーム。その中の小さな一室で勝新太郎さん(享年65)の妻、中村玉緒(86)がひっそり暮らしている。勝さんの甥にあたる俳優の若山騎一郎(60)が過日、彼女に対面。長きブランクを経て目にした様子を穏やかに語った。

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16年ぶりの再会

「玉緒おばちゃんとは2009年に勝おじちゃんの13回忌で会ったのが最後。親族だというのに16年も会っていなかったけど、姉と妻と相談して会いに行くことを決めた。おばちゃんの長女に連絡したら“喜ぶと思うから、ぜひ会って”と返事があったよ」

 そう話すのは、名優・若山富三郎さん(享年62)の息子で俳優の若山騎一郎だ。若山にとって、父・富三郎の弟である勝さんは叔父、中村は叔父嫁にあたる。

 中村は2年前のイベント出演を最後に表舞台から姿を消し、老人ホームに入居した。一部女性誌などでは、認知機能が低下しているとも報じられた。

 若山は10月12日、中村がいる施設を訪れた。

「楽しくて、すっごく幸せやったんやで」

 久方ぶりの再会で話題は尽きなかったが、中村は、ふと、壁にかかった写真を指さしたという。若山が室内を見回すと、中村を囲むようにさまざまな写真が飾られていた。

「入口から向かって右側の壁には、勝おじちゃんと映画で共演した時の写真、結婚時の二人や、玉緒おばちゃんの両親の写真が並んでいた。左側の壁には、おばちゃん夫婦とその子どもたちの写真があった。おばちゃんは、京都の動物園で昔に撮ったモノクロの家族写真を指さしてこう言ったんだ。“本当に楽しかったん。楽しくて、すっごく幸せやったんやで”って」

 ほかにも「あのときパパさん(勝さん)はこう言ってくれたんよ」などと、幸福に満ちた思い出を繰り返し語り聞かせてくれたという。

「夫にあれだけ苦労させられ、すべて犠牲にしてきたのに、勝おじちゃんの愚痴や家族の悪い話はひとつも出なかった。おばちゃんは幸せだった当時の思い出だけを話していたんだ」

 勝さんが他界して残した14億円の借金を、中村は20年以上かけて完済した。しかし、彼女が味わった苦しみはこれだけにとどまらない。19年、長男の鴈龍(がんりゅう)さんが55歳で世を去ったのだ。

「おばちゃんが今も“パパさんを愛しているの”と話す姿に、人はこんなにも人を愛することができるんだって思った。辛かった記憶は全部消えて、おばちゃんは今、かつて幸せだった頃の記憶の中だけにいる。俺たちの知らない幸せが、そこにはあるんだと思うよ」

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