高倉健さんが発した「仕事」についてのしびれる一言とは

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 2014年11月10日、日本を代表する俳優、高倉健さんが亡くなった。享年83。

 早いものでもうそれから9年もたった。

 健さんについては、映画の主人公のイメージと重なる「男前」な素顔にまつわるエピソードが多く残されている。

 その健さんを四半世紀余りにわたって追ってきたライターの谷充代さんが執筆した著書が『「高倉健」という生き方』だ。撮影現場はもちろん、私的な会合や旅先でのさまざまな秘話が盛り込まれた同書の中から、健さんの仕事に関する「名言」を一つ、ご紹介しよう。

 映画「海へ」を撮影していた頃の話。ある雑誌の編集者からの依頼で、谷さんは撮影現場の取材を行っていた。

 健さんの肉声も取れ、まとめた原稿を送った後、「事件」は起きた。最終的な締め切り間近になって、その雑誌の編集長から谷さんのもとに電話が入ったのだ。

「原稿を読ませてもらいました。実に面白い内容です。今になってなんですけど、明日校了(原稿を仕上げること)にしたいので、高倉さんご自身から(許諾の)電話をいただけたらと思うのですが」

 編集長に悪気は無かったのだろう。あとになって本人サイドから「許可していない」などとクレームが来たら困る、と思ったようだ。本人から「OK」の了承を得れば安心だ、と考えたらしい。

 リスク管理のため、ともいえるが裏を返せば「担当編集者や記者がOKというだけでは信用できない」と言っているに等しい。

 これでは自分を信用して起用してくれた編集者の顔をつぶすことになるのではないか。そう考えた谷さんは、迷いながら健さんのオフィスに電話をかけて、「健さんにお話ししたいことがある」旨を伝えた。

 すると健さんからすぐに電話がかかってきた。事の経緯を話すと、健さんは短くこう言った。

「一緒に仕事をする仲間を信じることができない人とは、仕事をすべきではない」

 それだけ言うと、電話は切れたという。

 その後、谷さんが編集長に電話をして「今回の仕事は降ります」と伝え、「原稿は返して下さい」と重ねると、気圧されたのか、編集長はそのまま掲載することにしたという。

 谷さんはこの一件で「プロの仕事」について大事なことを教えてもらった気がする、と振り返っている。

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