視聴率好調「ばけばけ」、滅多に他人のドラマを誉めない「テレビマン」の間でも評判が高い理由
写真の女性の正体
朝ドラことNHK連続テレビ小説「ばけばけ」が好調だ。14日放送の第35回は世帯視聴率が番組最高の16.1%を記録した。ヒロイン・松野トキ(高石あかり)と家族の問題を描いた回だった。17日放送の第36回からはトキと英語教師のレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)の物語に移っている。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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【写真】「でたぁ!」「2人してツボってる」…トキの“変わった”スキップに爆笑
今、気になるのはヘブンが大切にしている女性の写真。フォトフレームに入れられ、机の上に置いてある。女中のトキは掃除の最中に初めて見た。第36回のことだ。トキは「きれいな方」とつぶやいた。
トキは危うくフォトフレームをビール浸しにしてしまいそうになる。第37回だった。ヘブンからビールを頼まれたものの、何のことか分からない。右往左往の末、やっと買ってきたものの、開栓前に瓶を振ってしまった。
コルクの栓を開けた途端、泡が勢い良く噴出。部屋の至るところがビールまみれになってしまった。慌てたヘブンが真っ先に守ったのがフォトフレームだった。
写真の女性はイライザ・ベルズランド(シャーロット・ケイト・フォックス)。ヘブンの米国新聞社時代の同僚だ。ヘブンに日本行きを勧めたのもベルズランド。ヘブンはこの女性に好意を寄せているらしい。
ベルズランドにもモデルがいる。エリザベス・ビスランド。やはり新聞記者だった。小泉八雲は40歳だった1890(明23)年に島根県松江市に来た。そのとき、ビスランドは29歳だった。
その8年前の1882(明15)年、ビスランドは米紙「タイムズ・デモクラット」(本社ニューオリンズ)に掲載された八雲の記事を読み、いたく感動する。自分もジャーナリストを目指す。(参考・小泉八雲記念館)
八雲の記事のタイトルは「死んだ花嫁」。社会派のルポルタージュだった。ビスランドはまず憧れの八雲に近づきたいと思い、書店で待ち伏せた。そして自分の書いた文章を読んでもらう。文章に目を通した八雲はビスランドの才能を認め、同じ新聞社に迎えた。(同・2019年11月30日付、山陰中央新報朝刊)
ビスランドは優秀でたちまち頭角を現す。米国の女性ジャーナリストの草分けとなった。また評判の美人。小泉八雲記念館などに残る写真を見ると、確かに美しい。八雲はビスランドに惹かれていく。ビスランドのほうは最初から八雲に憧れていたから、2人は心を通わせた。
ビスランドの入社から6年後の1888(明21)年、彼女は雑誌「コスモポリタン」(本社ニューヨーク)に転職する。キャリアアップだ。ニューオリンズとの距離は2000キロ以上。それでも2人は手紙でのやり取りを続けた。
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