妻は不在、子どもは就寝中の自宅で「かくれんぼ」逢瀬 “愛されなかった過去”が暴走させた?40歳夫の家庭崩壊
その日も妻は不在のはずだった
そんな原っぱでのかくれんぼみたいなことがいつまでも続くはずはない。半年ほど前、義父が亡くなった。ひとりになった母が寂しそうだからと、土曜の夜は紗絵さんと子どもたちが何度か泊まりに行った。
「あの日もそうでした。ひとりになるのがわかっていたので、優奈に連絡して、これからおいでよと誘ったんです。優奈が来て、ふたりで少しワインを飲んだり冷凍ピザを食べたりして、夫婦の寝室に誘いました。それもまた彼女の興奮を煽ったんでしょうね。燃えに燃えて一息ついたとき、ガタンと音がした。妻が帰ってきたんです。しかも一緒にいたのは優奈の夫、つまり僕の先輩でした」
4人は見つめ合って固まった。先輩が「どういうつもりなんだ」と優奈さんと謙太郎さんに詰め寄った。紗絵さんは夫の不倫に気づき、相手を特定し、その夫に連絡をとったのだ。冷静にことを進めた紗絵さんには本気の怒りがあったのだろう。
「先輩にいきなり殴られました。庇ってくれた優奈も殴られて。暴力はやめてと紗絵が叫んだ。僕と優奈はほぼ全裸状態でした。紗絵はバスローブを投げて寄越した。それを羽織りながら、地獄だなと思いました」
紗絵さんが「離婚しない」ワケ
まずは夫婦で話し合いましょうと紗絵さんが冷静に言い、優奈さんは夫に引きずられるように去って行った。紗絵さんは、「私は許せないと思う」と一言言って、実家に戻っていった。
「紗絵の実家は歩いても20分くらいで行ける距離なんです。それ以来、紗絵も子どもたちも実家で暮らしています。離婚はまだしないと言われています。というのも先輩と優奈は離婚してしまったんですよ。でも子どもがまだ中学に入ったばかりだから、離婚はしたけど優奈は“家事要員”として一緒に暮らしている。ただ、子どもが18歳になったら出ていくようにと言われていて、日常会話はほとんどないそうです。『私が離婚したら、あなたは優奈さんと一緒になるんじゃないの』と紗絵は言っていた。だから離婚はしないと」
「妻を傷つけるつもりはなかった」
先輩も謙太郎さんも、会社に知られるのは避けたい。先輩とのやりとりの中で、優奈さんの両親が大病してお金がないという話は嘘だったとわかった。優奈さんが風俗で働いていたことを先輩は知らないままだ。
「先輩はけっこう人に奢ったりするのが好きだから、家計は苦しかったのかもしれません。先輩なのか優奈なのかはわからないけど、見栄を張って子どもにはたくさん習い事をさせていたし、中学も私立に通わせているし。家も立派な一軒家を購入しています。うちの会社の給料でよくそこまでできるなと思っていましたから」
優奈さんとは今は連絡をとっていない。とりたい気持ちはあるが、これ以上、紗絵さんを刺激したくないとも思っている。
「僕はどこかで紗絵は許してくれると思っていたのかもしれません。気を抜いていたというか……。妻を傷つけるつもりはなかった。ただ、自宅で女性と会うのは興奮したし、そのまま寝てしまえるから楽でもあった。早朝、必ずシーツなどを洗わなくてはいけなかったけど、そうしているのがまた刺激的だったんですよね。あまりにも非日常だから。でもそんなことをしていたから天罰が下ったんでしょう」
反省しているのかいないのか、彼はどこか他人事のように語っていた。子どものころからのどうにもならない孤独感を、彼は日常と非日常を交互に重ねることで埋めようとしていたのだろうか。
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やはり謙太郎さんの原点には、恵まれなかった幼少期の経験があるのだろうか。彼をネグレクトした母、その詳細は【記事前編】で紹介している。
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