「和田アキ子」はなぜ、批判されるようになったのか 「テレビ」が生んだ巨大なスターの終焉

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

人物像を考える

 和田アキ子が司会を務める「アッコにおまかせ!」(TBS系)が来年3月に終了することが発表された。1985年の放送開始から40年にわたって日曜昼の枠を守ってきた番組がついに幕を下ろすことになる。そこには、和田が日本の芸能界・テレビ界で担ってきた役割が終わりを迎えようとしている、という象徴的な意味が込められている。そもそも和田アキ子とは何者だったのか。その人物像について改めて考えてみることにする。【ラリー遠田/お笑い評論家】

 ***

 和田アキ子は圧倒的な「声」の持ち主である。デビュー当初から「和製リズム&ブルース」として知られ、骨太でソウルフルな歌唱は、日本の音楽界において唯一無二の存在感を放ってきた。黒人音楽の影響をここまで真正面から体現した女性歌手は珍しく、その豪放な歌声は彼女を単なる歌手以上の象徴的存在へと押し上げた。

 彼女の魅力はその歌唱力だけにあるのではない。面倒見の良さや義理堅さ、そして情の深さといった人情味も、彼女を構成する重要な要素である。多くの若手芸人やタレントが彼女を慕うのは、豪快なキャラクターの裏にある温かさや筋の通った優しさを知っているからである。

 その性格形成には、幼少期の厳しい家庭環境が影響しているのかもしれない。父親が絶対的権力者として家庭に君臨し、子供たちが全員敬語で接するような抑圧的な空気の中で育った和田は、反動として非行に走ったが、その過程で洋楽や英語の歌と出会い、強烈な負けん気と好奇心を音楽に対する情熱へと昇華させていった。アメリカのソウルに魅了され、ジャズ喫茶などで歌っていた彼女がスカウトされたのは必然だったと言える。

 しかし、スター街道は決して順風満帆ではなかった。デビュー直後は生活も苦しく、先輩歌手から受けたいじめも壮絶だった。大部屋楽屋で嫌みを言われたり、靴に落書きされたりした。収録中にもある男性歌手に「お前がいると俺の背が低く見えるから、俺の横に並ぶな」と言われて蹴飛ばされたこともあった。そんな環境の中でも歌手としての実力で突破口を開き、「どしゃぶりの雨の中で」「笑って許して」「あの鐘を鳴らすのはあなた」とヒットを連発し、大歌手としての地位を確立した。

次ページ:時代とギャップ

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。