高市政権で「金融所得課税」大幅引き上げの可能性が? “株の稼ぎ”はどうなるか
7.6兆円の財源が必要に
「国の政策に個人投資家が対抗できることはあまりありません。しかし、NISAなどの非課税枠があるにせよ、株で資産を増やしたい個人にとって、金融所得課税の引き上げは夢のない話です」
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そう語るのは、個人投資家の「夕凪」氏である。高市政権の発足で、株価は5万円を突破したが、このタイミングで株の利益にも手を出してくるのだろうか。背景には、財源の問題がある。
いわゆるサナエノミクスは、聞こえはいいが、財政には相当な負担がかかることが分かっている。
例えば、新政権が掲げているガソリン税の暫定税率廃止は約1.5兆円の税収減、非課税収入の上限を178万円まで引き上げる「年収の壁」対策では7.6兆円の財源が必要になるといわれている。
また、首相は防衛費を今年度中に対GDP比2%に増額する方針を表明しているが、これも1兆円近くがのしかかる。税収の上振れ分だけで賄いきれない可能性が高く、小野寺五典氏率いる自民党税調が、年末にかけて、どんな財源を示してくるのか注目されているのだ。
「引き上げは難しいことは分かっているはず」
そこで、高市早苗首相が過去に語っていた財政論をひもといてみると、金融所得課税の大幅引き上げが浮かび上がってくる。
例を挙げれば、「月刊Hanada」の2021年10月号で高市氏は、こう語っている。
〈金融所得税制については、「逆進性」が大きい。不満は出ると思いますが、この時期には増税をさせていただきたい。マイナンバーを活用して金融所得(配当所得と譲渡益)を名寄せして、50万円以上の金融所得の税率を現状の20%(註・現行は約20.3%)から30%に引き上げると、概ね3000億円の税収増になります〉
いきなり1.5倍の増税だ。同様のことは、21年9月に出版された高市氏の『美しく、強く、成長する国へ。』(ワック)にも書かれている。
ところが、これが第7刷では、ざっくりと削られている。どうなっているのだろうか。
政治アナリストの伊藤惇夫氏が言う。
「岸田文雄元首相も政権発足当初は金融所得課税の見直しに積極的でしたが、途中から撤回しています。株価を上げたい経済界が猛反発したからです。また、税率を上げることは“貯蓄から投資へ”という政府の基本政策とも齟齬(そご)を来すことになる。高市さんも、金融所得課税の大幅な引き上げが難しいことは分かっているはずです」
実際、10月21日に内閣が発足した際、片山さつき財務大臣に示された指示書にも、主張していた金融所得課税の文字はなかった。
「税収による財源が提示できない高市政権は、早晩、赤字国債の発行に踏み切ることになるでしょう」(同)
「責任ある積極財政」とは、やはり大幅な金融緩和なのか。正体が、案外早く明らかになるかも。


