「クマの駆除を自衛隊がやる必要はない」と専門家が指摘する理由 現役ハンターは「手当は経費の足しにすらない」
「自衛隊がやる必然性はあるのか」
「今月中旬までに国はクマ対策パッケージをまとめると言っていますが、さすがに遅過ぎると思います」
と指摘するのは、クマの生態に詳しい岩手大学農学部の山内貴義准教授。
「その頃はちょうど多くのクマが冬眠を始める時期にあたります。今からガバメントハンターなどを増やす訓練を始めても、現場に着く頃にはクマは冬眠してしまっている。即効性は期待できないでしょう。まだ来年に向けた事前策というなら話は分かります。しかし、来年は木の実が今年ほどは凶作にならないと予想されるので、この事態が続く見込みも薄い。このままでは自衛隊の後方支援も、単なる政治的なパフォーマンスに過ぎないのではないか。そう訝しんでしまいます」
小泉大臣が口にした「箱わな設置」も、専門家の立場からすれば効果に疑問があると言うのだ。
「箱わなは置く場所を決めるにも土地勘やコツが必要で、ベテラン猟師でないと効果的に仕掛けることは難しい。自衛隊の後方支援といえば聞こえは良いですが、はたして彼らがやる必然性があるのでしょうか。箱わなの運搬なら臨時職員を増やせばいい話。その分の予算を、ハンターへの出動手当拡充や若手育成、わなの捕獲状況などをリアルタイムで知らせるIT機器などに振り向けた方が現実的だと思います」(同)
「面倒くさいのは人間」
根本的なクマ対策は、地元を知る熟練ハンターが増えることに尽きるという。
「いつ何時起こるか分からない事態に対しては、地元のハンターが一番動きやすい。彼らの充実なしに現状が変わることはありません。例えばクマの出没現場では、周辺住民を避難させ、安全を確保した上で発砲します。銃を撃てば済む簡単な話ではなく、現場で自治体の職員や地元警察、他のハンターと綿密にやりとりをしてタイミングを図る。そうした人間関係は一朝一夕に築けません。なんだかんだ最後まで面倒くさいのは、人間なんです。だからクマ対策パッケージで自治体職員や警察などから新米ハンターを養成するにしても、3~5年はベテランの猟友会ハンターと行動を共にして経験を積まないと、害獣駆除は難しいのです」
首相就任会見でトップ自ら「国家国民のため果敢に働く」と見得を切った高市政権。その真価がさっそく試されているといえよう。
前編【「会社をクビになるほど忙しない」 クマハンターが嘆く実情 「出番が多くて疲れ果てている」】では、積丹町議会の副議長による、ハンターへのひど過ぎる暴言などについて報じている。
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