「仲良しご近所さん」との奇縁を知って45歳夫は“うつ”状態に… 異色の結婚観にも影響されはじめた夫婦の行き着く先は

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【前後編の後編/前編を読む】妊娠で“なんとなく結婚”して20年…妻が「息苦しい」と言い出した 婚約パーティーでの密かな裏切りも見過ごしたのに

 倉木実さん(45歳・仮名=以下同)は、10歳の時に両親が離婚し、可愛がっていた5歳年下の弟と別々に暮らすことになった。喧嘩ばかりしていた親を見ていたため、「自分は結婚に向いていない」と思っていたが、会社の同期の遼子さんと28歳で結婚。遼子さんは当時、上司と不倫関係にあったが、実さんとの間に子供ができたことがきっかけで、説得するようにして結ばれた。友人同僚を招いた披露パーティーでは、抜け出した妻が例の上司とキスする場面に遭遇したものの、実さんはどこか超然としてそれを受け入れたのだった。

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 29歳のときに娘が生まれ、31歳のときに息子が生まれた。淡々と進む日常だったが、「家族」はそれなりに彼に楽しみを与えてくれた。

「子どもたちのことを考えたら、夫婦げんかなんてしている暇もない。うちの両親はどうしてあれほどけんかしていたんだろうと不思議な気持ちになりました。僕らは、子ども最優先と決めたし、遼子も再就職したから、とにかく忙しくて文句を言う暇があったら体を動かすしかない。下の子が5歳くらいになるまでは家の中なんて地獄絵図でしたよ。それも今はいい思い出ですけど」

 36歳のときに中古マンションをリノベーションして購入した。結婚して10年たったとき、遼子さんは「私、あなたと結婚してよかった」と笑顔を見せた。このとき初めて、ふたりは本音で語り合ったという。

「妻も僕も、この結婚には仕事のような姿勢で取り組んでいたことがわかった。恋愛感情があまりなかったから、目の前の現実問題に冷静に対処し、ものごとがうまくいくように配慮して。だから家庭としてうまく運営ができた。その間、お互いに相手の人間性を認め直したというか。妙な結婚だったけど、最高の組み合わせよねと遼子が笑ったので、本当にそうだなあとしみじみ思いました」

「ご近所さん」との意外すぎた関係性

 4年ほど前、そのマンションに新たな家族が越してきた。ちょうど実さん一家と同じような家族構成で、下の子が中学の同級生になったことから家族ぐるみのつきあいが始まった。

 実さん一家は近所とはつかず離れずの関係を保ってきたが、佐藤さんというその一家とは妙に馬が合い、2家族でキャンプに行ったり、夫婦同士で食事に行ったりもした。

 佐藤家の夫は敏昭さん、妻は瑠莉さんという名だった。ある晩、実さんは最寄り駅で敏昭さんにばったり会い、ふたりで居酒屋に寄った。敏昭さんはそれまで酔った姿を見せたことがなかったのだが、その日はしこたま飲んで酔った。

「そして『僕には実は弟がいたんですよ』と打ち明け話が始まった。そういうの、僕はあまり得意じゃないから、聞き流していたんですが、なんだか話がおかしい。よくよく聞いてみたら、それって僕の生き別れた弟じゃないかと思えてきた。どうやら敏昭さんの両親が離婚、彼は母と暮らし始めたけど3年後に母が再婚した。それが僕の父親だったんです。彼の母は小さいながらも会社経営者の跡取り娘だったので父は婿養子に入ったという。弟はその後、継母に懐かず、グレていった。敏昭さんも懸命に弟を引き戻そうとしたけど、そのうち弟は行方がわからなくなった。その弟が亡くなったというんです。行旅死亡人ということだったけど、わずかな持ち物から敏昭さんに連絡が来たと。ショックでした。僕らはふたりとも、同じ弟をもっていた。もしかしたら弟に導かれた関係なのかもしれない。こんなことがあるんですねとふたりで泣きました。それぞれの弟を思いながら……」

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