立花孝志容疑者逮捕「先月のドバイ旅行で逃亡を警戒か」「2027年3月までに有罪確定すれば3年以上は出てこられないかも」元テレビ朝日法務部長弁護士が解説

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前科の執行猶予は取り消される?

 立花容疑者には前科がある。NHKの受信契約に関する個人情報を不正に取得したなどとして威力業務妨害、脅迫などの罪に問われた事件で、2023年3月に懲役2年6カ月、執行猶予4年の有罪判決が確定している。この「執行猶予」が終わる「2027年3月」は、立花容疑者にとっては大きな意味を持つ。

 もともと立花容疑者は、前刑の執行猶予期間が終わるまで何事もなく過ごせば2年6カ月の刑に服さなくても良かった。逆に「2027年3月」の執行猶予期間満了前に新たに罪を犯して拘禁刑以上の実刑になってしまうと、執行猶予は取り消されて2年6カ月の刑が復活する。もし今回の逮捕容疑について「2027年3月」より前に裁判が終わり拘禁刑の実刑判決が確定した場合は、今回の事件の刑に加え、前刑もつとめなければならなくなるのだ。その服役はかなり長くなるだろう。

 一方で今回の事件の裁判に時間がかかり、判決確定が「2027年3月」より後にずれ込んだらどうなるか。その場合、前刑の執行猶予期間は満了し、「2年6カ月」の刑は消える。このため今回の事件の刑だけつとめれば良くなり、「2027年3月」より前に裁判が終わった場合より服役が大幅に短くなる可能性がある。

タイムリミットは「1年4カ月」

 実は今回のようなケースを想定して今年6月、「執行猶予期間中に新しい犯罪を行っても、その裁判を遅らせれば服役を短くできる」という事態を防ぐための改正刑法がようやく施行されたのだが、立花容疑者の前回の事件はその前の話だ。

「2027年3月」というタイムリミットまでに残された時間は約1年4カ月。これは一見長そうだが、実はそうでもない。

 立花容疑者の前の裁判は2020年4月に在宅起訴され、一審判決が出されたのは約1年9か月後の2022年1月。最高裁が2023年3月22日付で上告を棄却し判決が確定するまでには2年11カ月余りの歳月を要した。仮に立花容疑者が起訴されてこのペースで裁判が行われたら、立花容疑者の裁判が終わるのは「2027年3月」を過ぎる可能性がある。

 ただし裁判所もこうした事態を放置することはない。私も国選弁護人として多くの刑事事件を担当してきたが、前刑の執行猶予期間満了が近い事件には他より早いスケジュール設定がされていた。もちろん起訴・不起訴の判断も裁判も慎重に行われるだろうが、同時に「時間」も気にしながら手続きが進められるのではないか。

 竹内英明元県議の妻は立花容疑者の刑事告訴に当たり、こう痛切な思いを語っていた。

「デマで人を貶め、死者に鞭打つ行為が平然と、公然と行われる。民主主義の根幹をなす選挙が、死者の冒涜に利用されることの異常さ、悪質さを私たちはもっと深刻に受け止めなければならないと思います」

 ご遺族の思いが法廷に届く日は来るのか。全ては今から始まる。

西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)
1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。弁護士登録をし、社内問題解決などを担当。社外の刑事事件も担当し、詐欺罪、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反の事件で弁護した被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。

デイリー新潮編集部

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