「タイパが悪くて受動的だから」…“本を読まない人”は読書にどんな印象を抱いているのか? 日本人の6割が「月に1冊も本を読まない」時代の実態

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 ここ数年、急速に「本を読まない若い人が増えている」と感じる。彼らに本を読まない理由を訊ねると、若干詭弁に聞こえるところもあるものの、あくまでロジカルな回答が返ってきた。基本的には「我々のような若者はデジタルに慣れ過ぎているので、あなた方高年齢の人とは思考が違うんです」というのが理由である。要するに、「本を読む人は古臭いんですよ」という主張を言葉の端々に感じるのだ。【取材・文=中川淳一郎】

電話が嫌いというメンタリティ

 文化庁が実施した2023年度の「国語に関する世論調査」では、月に1冊も本を読まない人は62.6%でこれは過去最高だという。また、クロス・マーケティング社による2025年「読書に関する調査」では、半年間に読む本が「1冊未満」の人は全体(20~69歳)で51.6%。この割合は20代と30代男性が最も低く44.5%。もっとも高かったのは40代女性の61.8%だ。

 こうした数字に目を通していた矢先、立て続けに2人の「読書数年間0冊」に出会った。20代女性と30代男性である。二人の意見を総合すると、読書をしない人というのは、「電話が苦手・嫌い」という人々と、非常によく似たメンタリティを持っているようである。

 2017年4月9日、はてな匿名ダイアリーに「不在着信だけ残すのといきなり電話してくるのは相手の時間と行動を拘束する行為だからやめてくれ」という文章が投稿された。これが当時、メールやメッセンジャーに慣れている若年層を中心に大いに共感されたのだ。合理主義を重視する中高年インフルエンサーや起業家もこれには同意した。匿名ダイアリー投稿者は電話をしてくる人間を「電話野郎」と呼ぶと宣言したうえで、嫌いな理由をこう書いた。

〈まずそもそも「電話」というのは、リアルタイムに
 ・相手の時間を奪う行為で、相手の時間や行動を拘束・制限する行為だということ。
 このことをまずわかってほしい。電話はリアルタイムで応答が必要なので、何かをしながら電話はできないんだよ。電話はかならず相手の手がとまる、ということ。電話野郎はまずそのことをどうか、わかってくれ。相手の都合をどうか考えてください。〉

 そのうえで、電話の内容は電話で話す必要があるものでもなく、さらに電話野郎は仕事ができない人物である、と、電話野郎にかなり手厳しい意見を述べた。この「時間を奪う」という点が本を読まない理由にも繋がると感じられたのだ。こんな主張である。

「本というものは、長文を全部読まなくては完結しないコンテンツ。しかも、本そのものは面白そうだと思っても、途中ダレてしまうパートが続いたりすることもあるから、タイパも悪いし、そもそも値段が高い」

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