「タイパが悪くて受動的だから」…“本を読まない人”は読書にどんな印象を抱いているのか? 日本人の6割が「月に1冊も本を読まない」時代の実態

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著者と編集者の決められた手順に従っているだけ

 ネットの場合、自分が見たいコンテンツや記事を能動的に探し、一つのコンテンツを完結させるのにそこまで時間がかからないという。さらに、広告が入っているため無料なので、節約もできる。しかもこうも言う。

「本に書かれた情報は大体ネットでも転がっていると思う。著名な作家や研究者が書いたコンテンツは本の形になっているが、ネットの情報でもかなり満足できるレベルの情報は獲得できる。むしろ、『大御所』とされる人の意見よりも、ネットの無名の投稿者や専門家やクリエイターの方が本音で鋭いことを言っているケースも多い」

 ここまで言われてしまうと、本の良さはもはや説明できなくなる。「新聞離れ」が2000年代前半に言われた頃、新聞社の宣伝担当者や、記者らは新聞の良さとして「自分が好きな情報だけを取りに行くわけではないから、想定外の情報を得られる」「綿密な取材としっかりとした原稿チェック体制があり、信頼性が高い」などと言った。それでもネットが優勢になってくると、まさかの「朝、新聞配達員が心を込めて配ってくれたことと、インクの匂いのぬくもりがある」などと言いだした。

 これはさすがに情緒的過ぎて共感されなかったが、昨今の読売新聞による「誤報」2連発(石破茂元総理の「退陣報道」、東京地検特捜部の「捜査対象者を誤る」)などもあり、さらにネットではオールドメディアのことを「マスゴミ」と呼ぶ流れが強くなっているため、新聞側の言い分も通用しないだろう。

 そして、本である。「能動的に情報を取りたい」の話が出たため「仮に本を買った場合も、それは事前の評判を知り、無数にある本の中から一冊を選んだのだから能動的な情報の取り方と言えるのでは?」と聞くと、「とはいっても著者と編集者の決められた手順に従っているだけ」と反論される。

 映画にしても、2倍速で見たり、サブスクの動画サイトではつまらなかったら10分で離脱したりもできる時代である。書籍というものがもはや時代遅れになってしまったのだ、と書籍関連の仕事を多数やってきた自分はつくづく痛感したのである。

 ただ、「文字」自体がオワコンというわけではないのは、一つの僥倖である。たとえばクリエイターけプラットフォームのnoteでは、1000~3000字ほどのコンテンツが100~300円ほどで売れる。これは「推し活」的な側面もあるわけで、出版社も書籍だけでなく、noteや超高額でも熱狂的ファンが買ってくれる「アートブック」に力を入れてもいいのではなかろうか。

中川淳一郎・ネットニュース編集者

デイリー新潮編集部

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