「モンキー・マジック」の“アチャー!”はイタズラだった…エンジニア激怒もミッキー吉野は大絶賛 ドラマ「西遊記」音楽秘話
「紅白歌のベスト10」でのハプニング
トミーがよく覚えているのは、当時出演した音楽番組のこと。毎週出演していた「紅白歌のベスト10」(日本テレビ系)では驚くべき出来事があった。
「生放送で、孫悟空の洋服を着たチンパンジーと一緒に出たことがあった。リハーサルでチンパンジーのトレーナーが一緒にいたので、チンパンジーと仲良くなったわけ。ところが本番で、カーテンが開いた瞬間、客席から『キャーッ!』って大歓声が上がって、チンパンジーがびっくりしておしっこしちゃって。最後には僕のここ(右腕)に嚙みついた。助かったのは、『モンキー・マジック』の衣装を着ていて、それが厚手だったこと。生地は切れなかったのに、皮膚が切れた。けど衣装のおかげで大きなけがはなかった」(トミー)
「夜のヒットスタジオ」(フジテレビ系)には、トミーが孫悟空、ミッキーが猪八戒、タケカワが沙悟浄、浅野が三蔵法師に扮して出演したことも。スティーヴは「僕は馬だったかな?」(本人談)と話す通り、主要登場人物ではない扮装だった。
「メイクが大変で、一人当たり2~3時間かかった。あの衣装のまま、僕とスティーヴと浅野さんは六本木の喫茶店にコーヒーを飲みに行ったよ(笑)。本番には通常の衣装で出て、リハーサルのときに西遊記の衣装で演奏した。それを編集でうまくつないだんだよ」(トミー)
演奏中に普通の衣装から西遊記の衣装に入れ替わる、という、まさに「モンキー・マジック」というタイトルのような演出でのテレビ出演だった。
「西遊記」以前の縁もあった 音楽と映像のマッチングの大切さ
「西遊記」で特撮監督を務めた鈴木清とゴダイゴは、作品以前から縁があった。鈴木がプロデューサーを務めた1977年の作品「小さなスーパーマン ガンバロン」の音楽も担当していたのだ。その劇中音楽に、悪役の「ワルワル博士」が変身する「怪人ドワルキン」をテーマにした「ドワルキン・ブルース」という曲がある。実はその曲の冒頭部分は、「西遊記」でも“悪が暗躍する際の曲”として使われていた。鈴木は、その意図をこう説明している。
「映像と音楽は本当にマッチングしないと盛り上がらない。その意味ではヒーローものにおいては、悪の魅力が絶対に必要。ガンバロンでもとっても面白い曲ができた」
また鈴木は、音楽プロデューサーの飯田則子の存在の大きさも口にする。
「台本を読んで、それに合う音楽を思い浮かべていた人でした。だから内容と音楽がマッチするんです。僕は『マッハバロン』から『ガンバロン』『西遊記』とお付き合いさせていただきました。今もお元気だったらその話もできたんですけれどね」(同)
飯田は「西遊記」のほか、「太陽にほえろ!」「火曜サスペンス劇場」「探偵物語」やアニメ「ルパン三世」の主題歌、BGMなどの音楽全般をプロデュースし、大きな足跡を残してきた。
この日のイベントでは、スティーヴが「ドワルキン・ブルース」、トミーがアニメ「ルパン三世」(第2シリーズ)の挿入歌「スーパーヒーロー」で、それぞれ歌声を披露。音楽と映像のマッチングの大切さを改めて示した。放送終了から45年が経過した「西遊記」だが、改めて見る特撮のすばらしさや、音楽と映像の相性の良さはこれからも色あせることはない。
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第1回【放送終了から45年「西遊記」特撮の舞台裏 觔斗雲は手のひらサイズ、百羽超のカラスは鉛仕込み…如意棒は家で布団叩きに】では、「西遊記」の特撮について、特撮監督を務めた鈴木清が語っている。
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