「モンキー・マジック」の“アチャー!”はイタズラだった…エンジニア激怒もミッキー吉野は大絶賛 ドラマ「西遊記」音楽秘話

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 1978~1980年に放送された日本テレビ系ドラマ「西遊記」シリーズの音楽といえば、ゴダイゴの名は外せない。主題歌「モンキー・マジック」やエンディングテーマの「ガンダーラ」「ホーリー&ブライト」で、ドラマの世界観を見事に構築した。10月に静岡県熱海市で開かれた特撮作品イベント「第8回熱海怪獣映画祭」で「西遊記」が上映された際には、ゴダイゴのメンバーでベースのスティーヴ・フォックスとドラムスのトミー・スナイダーがゲスト出演。2人が語った当時の思い出をお届けする。

(全2回の第2回)

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エンジニアを懲らしめてやろうと……

 現在、ゴダイゴはバンド結成50周年の全国ツアー中。映画祭と同じ静岡県で11月15日(浜松市浜北文化センター)、30日(沼津市民文化センター)とライブを開催する。ライブで「モンキー・マジック」を演奏するとき、冒頭の「アチャー!」の声は、ドラムスのトミーがシンバルなどを叩きながら発声するのがおなじみだが、レコード音源で叫んでいるのは、実はスティーヴだという。

「ライブでは僕が突っ立って叫ぶよりはいいからね。当時、何があったかというと、僕は(ボーカルのタケカワユキヒデの)オクターブ下をスタジオで歌うことになっていたの。で、今も変わらないかもしれないけれど、当時の僕は悪戯が好きだったの。で、エンジニアを懲らしめることが好きだった(笑)」(スティーヴ)

 ボーカルテイクのため、スタジオに入っていたスティーヴ。別の部屋では、エンジニアとミッキー吉野が大音量でスピーカーからレコーディングの音を流していた。スティーヴのボーカルを録るためのテイクが始まり、シンセサイザーのイントロが流れ始めた。「西遊記」の映像では、花果山の大きな岩に雷が当たり、割れる場面だ。そこでスティーヴが思いっきり大きな声で「アチャー!」と叫んだのだ。もちろん事前の予定には全くない。単に悪戯しようと思っていただけだ。

「思いっきり、マイクのすぐそばで叫んじゃったのよ。そうしたらテープが止められて、エンジニアが出てきた。『バカヤロー!何やってんだお前!』って怒られて。でもそのすぐ後にミッキーが出てきたの。手を叩いて『良かった!良かった!』ってね(笑)」(同)

 音源はそのまま採用され、あの冒頭の叫び声は生まれたのだ。スティーヴの遊び心がなかったら、「モンキー・マジック」のインパクトは少し薄れていたのかもしれない。

劇伴で300パターンのナンバーを収録

「西遊記」の劇中音楽(劇伴)については、非常にシステマティックに制作していったといい、ミッキー吉野によると、約300パターンを録音した。1曲につき、明るい感じから暗い感じまで7段階のモードで進めていったところ、それぐらいの数になったという。台本を読んで、自分なりの色を想像したうえでメロディーやハーモニーを考えていく作業だったとミッキーは明かした。

「やはり大変でしたけど、楽しかった。とてもチャレンジングだった。ステージに上がってお客さんが喜ぶのを見るのも好きだけど、スタジオの仕事が好きだったのよ。ミッキーは僕やトミーには任せっきりで演奏させてくれた。僕は自分のベースラインを考えて、トミーは自分の叩くフレーズを考えた。でもギターの浅野(孝已)さんはそういう(自分で考えてやる)ことが上手い人ではなかったのよ。(技術は)上手くて日本のトップ10に入るようなギタリストだったけど、こういう(任されるような)バンドにはそれまで所属していなかったらしいのよ。だからミッキーが浅野さんに『こうして、こうして』といろんなことをやらせてた。でも浅野さんが上手くできたからよかったのよ」(スティーヴ)

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