売掛金を払うため「ドラッグの運び屋」になった美貌の女子大生…「密輸組織」から送りつけられた“1枚の画像”に震え上がった理由

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「レナ、一緒に抜けよう」

「私、利久斗のことが引っ掛かってて。売れないホストに騙された時と一緒かな。男の影とか弱さに惹かれるというか。よくわかんないけど、バカだよね。自分が置かれている状況も忘れて……」

――つまり利久斗に惚れたということか。かなり危険な恋だな。

「……」

 3回目の“運び”もホーチミンで、概ね2カ月後だったらしい。ホテルに到着したのを見計らったように利久斗がひとりで訪ねてきたという。

「彼が“ごめんね、今回は中止になっちゃった。でも、旅費と日当は支給されるから、何か美味しいものでも食べて帰んなよ。それから携帯番号ありがとう”と言ってきたの。なんか嬉しくなって“じゃあ、一緒に食事しよう”と誘っちゃった」

 2人はブイビエン通り(ホーチミン最大の歓楽街)で食事をしてからナイトクラブへ。酔った利久斗は「僕は 利久斗。母親がベトナム出身だから、ここで生きて行くこともきるけど日本に帰って、出頭して、もう自由になりたい」などと語ったという。さらに、こう続けた。

「僕はベトナム語がある程度わかるので、こっちのボスの下で日本人の“運び屋”の世話役をやらされている。この組織は中国人がボスで、その下にベトナム人や日本人のメンバーがたくさんいるんだ」

 彼の説明によれば、この組織は、アジア各国から純度の高いMDMA結晶やDMT(ジメチルトリプタミン/幻覚剤)パウダー、さらにLSD原液などを日本に密輸。それを原料に販売用の商品を製造し、主に外国人グループに売っているのだという。

「たしかに給料はいいけど、情報を漏らしたり、組織から抜けようとしたりすれば制裁が待ってる。僕も何度か酷い目に遭わされてね……。だから、レナ。一緒に抜けよう」

 レナは彼の言葉を聞いて驚いたそうだが、ひとまずひとりで日本に帰国することになった。

「妹が飛んじゃった」

 密輸の詳細や、犯罪組織の内情については、捜査上の問題もあってここまでに留めたい。筆者はシーラとレナ姉妹に次のようなことを促して、この日の面談を終了した。

――いますぐにでも、最寄りの捜査機関を訪ねなさい。もし不安なら私が一緒に行って概要を説明しても構わない。その際、パスポートや運転免許証、eチケットの控え、スマホなどは絶対に忘れずに持参してほしい。それから関係者の名前や特徴は、できる限りきちんと思い出して書き留めておく。また、今日からレナは実家(姉の家)で生活して外出は極力避けるように。もし組織から連絡があったら“体調不良でいまは動けない”と適当にごまかしなさい。本当に利久斗を助けたいのであれば、覚悟をもって過去を清算するべきだ。

 姉妹は私の話に頷いて、帰路についた。その後、何の連絡もないので心配していたのだが。面会から10日後の深夜にシーラが電話をかけてきた。完全にパニックに陥っている様子だった。

――どうしたんだ、警察かマトリに行ったのか? 心配したんだぞ。

「あのバカな妹、私が出張で家を空けている間に飛んじゃった……。さっき電話があって、“お姉ちゃん、ごめん。いまハノイにいるの。利久斗がケガをして、日本に連れて帰ろうと思うの。私は平気だから、兄さんにも謝っておいて。予定が見えたら連絡する。必ず約束を守るから”って。私、どうしよう」

 翌日、シーラと面接した私はこう伝えた。

――とにかくレナに電話やLINEを継続して送り続けてほしい。同時に、航空会社やホテルを調べて、レナの渡航スケジュールを照会しておく。クレカの使用状況も調べてほしい。しばらく待って連絡がなければ諸々問い合わせるが、それでも行方がわからないときは日本大使館や総領事館、海外旅行保険会社に安否確認することになるだろう。

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