24歳元地下アイドルを殺害した被告に懲役16年 半年間のパパ活に「退職金全額6000万円」を注ぎ込んだ「富士ゼロックス」元社員57歳の常軌を逸したリタイア生活
東京地裁立川支部は11月7日、東京都府中市内のホテルで2023年2月、出会い系サイトで知り合った女性(当時24)を殺害したとして、殺人罪などに問われた石川晃被告(57)に懲役16年の判決を言い渡した。5日間にわたる裁判員裁判で浮かび上がったのは、30歳以上も歳の離れた元地下アイドルの女性に夢中になり、ブレーキが効かなくなってしまった男の転落人生だった。(前後編の前編)
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【写真7枚】秋葉原の路上で勧誘する「コンカフェ嬢」たち。殺害されたAさんは「コンカフェの修繕費が必要」などと石川被告に何度も無心していた
白髪混じりで「青白い」大人しげな容貌
判決言い渡しの日、法廷に入廷した石川被告は被告人席に肩を窄めて座り、俯いて開廷を待っていた。頭髪は白髪混じりで体格はか細い。顔は異常なほど青白く、とても殺人を犯すような男には見えない。
裁判長が「被告人を懲役16年に処する」と判決を言い渡した後も動揺しした様子は全く見せず、大人しく判決理由を聞いていた。
事件が発覚したのは2023年2月3日深夜。東京都府中市内のホテル室内から女性一人が入ったまま24時間経っても出てこないことを不審に思った従業員が、府中署に110番通報した。駆けつけた署員が、室内で血を流して亡くなっているAさんを発見。死因は、刃物で頸部を3箇所刺されたことによる、左内頸整脈及び気管損傷に基づく出血性ショックと血液吸引に伴う窒息だった。
前日の深夜、石川被告はAさんとホテルに入室して6万円を支払った。その後、所持していたサバイバルナイフでAさんを殺害。午前5時頃、Aさんの財布から自身が渡した6万円を奪って一人で退室し、タクシーに乗って自宅に帰った。遺体発見から数時間後、自宅を訪れた警官に「彼女を殺しました」と打ち明け、逮捕された。
事件から2年8カ月。10月27日の初公判で石川被告は「間違いありません」と起訴事実を認めた。
日大卒業後、NECに就職
検察側は冒頭陳述で、被告は出会い系サイトでAさんと知り合い、金銭を支払うことでAさんとの関係を維持してきたが、貯金が底をついて金銭が渡せなくなり「別れるくらいなら」と考えてAさんを殺害したとした。
検察官は「強固な殺意があった」「Aさんを死亡させた結果は重大」「真剣交際などではなく、被告の独占欲から発した怒りによる殺害で酌むべき事情は乏しい」と裁判員に訴えた。
一方、弁護側は冒頭陳述で「経済的・精神的に追い詰められて突発的な犯行に至った」「計画性もなかった」と情状酌量を求めた。
弁護側の冒陳などによると、石川被告は91年に日本大学文理学部卒業後、NECに就職。93年、会社の合併に伴い富士ゼロックスに転籍し、通算で30年弱勤務したが、2018年50歳の頃、早期退職制度に応募して退職した。退職金は約6000万円だった。2019年から別会社にSEとして再就職したが、2022年5月頃には出社しなくなった。2015年頃から不眠症や双極性障害を患っていたという。婚姻歴はなく、女性と交際したのは30代の頃に一度きりでわずか3カ月間だった。
再就職先に出社しなくなり事実上のリタイア生活が始まった頃から、常軌を逸した浪費生活が始まった。22年3月には、45万円、50万円、80万円の値がつくアニメの高価なフィギュアを一度に大量購入。8月頃からは出会い系サイトで知り合った女性たちとのパパ活を開始し、4人以上と男女の関係になった。そのうちの一人がAさんだった。
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