「安倍氏の“正統後継者”だとアピール」 高市首相が人事も政策も安倍政権を踏襲する理由とは

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何より先に「アベ」の名を持ち出し……

 さすがに今井氏もこれをむげにはできなかったようだ。菅、岸田の両政権下で務めていた内閣官房参与への復帰を了承し、政権運営に関与することになったのである。

「今井氏は首相に“トランプ大統領の考えを把握するため積極的に情報収集することが第一歩だ”と進言しました。これに首相は“外務省を使える”と応じたものの、今井氏はかねて外務省の仕事の進め方に懐疑的です。“外務省に任せれば、石破政権のときのようにトランプ対応が後手に回りかねない”と反論したということです」(前出の官邸関係者)

 かくして28日、東京・元赤坂の迎賓館で行われた首脳会談。高市首相は冒頭、歓迎の意を述べた後、

「安倍総理に対する、長きにわたる友情に感謝しております。また、昨年末に安倍昭恵夫人(63)を歓待いただいたことにも感謝申し上げます」

 何より先に「アベ」の名を持ち出し、トランプ氏の次なる応答を引き出した。

「晋三氏は私にとって素晴らしい友だった。(高市)総理のことをよく話していた。ここでお会いする前から、総理になるという報に私が接する前から、素晴らしい話をよく聞いていた。晋三氏もとても喜んでいると思う。米国側を代表して、私からも(総理就任を)祝したい」

 かくて先進国首脳の中で誰よりトランプ氏の信頼を勝ち得た安倍氏の“正統後継者”だとアピールして、高市首相は対峙する巨魁の歓心を買うことにひとまず成功したのだった。

今井氏の経歴

 今井氏は2012年に首相に返り咲いた安倍氏の下で政務秘書官を担い、政権終盤には首相補佐官も兼務、ますます政権中枢で手腕を振るった経歴を持つ。

 手がけたものとしてはアベノミクスの「三本の矢」や「戦後70年談話」「米議会上下両院合同会議演説」のほか、米ニューヨーク証券取引所での「バイ・マイ・アベノミクス」演説などがある。

 元NHK解説主幹でジャーナリストの岩田明子氏によると、

「今井氏は当時、政務秘書官として安倍首相のスケジュール管理や体調管理はもちろん、内政・外交政策など、政権運営のあらゆる分野に深く関わっていました。また国会答弁にも隅々まで目を通し、原稿に“魂を吹き込む”ために文言の細部にわたるまで手を加えていたといわれています」

 高市首相が今井氏の起用に執心したのは、安倍氏が12年以降20年までの長期安定政権を築いた手法を取り入れようとしたからだとみられる。

 政治部デスクの話。

「安倍政権では経産省出身の今井氏が政務秘書官として政策立案を主導する『攻め』の役割を担い、警察庁出身の杉田和博氏(84)が官房副長官として危機管理を所管する『守り』の役目を果たしました。今回、高市首相は今井氏の推挙を受け、政務秘書官に前経産次官の飯田祐二氏(62)を起用。官房副長官には前警察庁長官の露木康浩氏(62)を指名しています。『攻めの経産省、守りの警察庁』という布陣は、まさに安倍政権の再来といえます」

 同様の意図は、他の人事にも色濃く表れている。

 安倍政権時、今井氏の下で事務担当秘書官を務めた防衛次官上がりの増田和夫氏(62)を内閣危機管理監に起用。

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