効果を高めるワクチン接種の時間帯は? 薬は「いつ飲みむか」で効果が変わる!
服用は何種類までにとどめるべきか、どれだけの期間飲むべきなのか。薬に関してそんな疑問を感じる人は多いかもしれないが、服用の「タイミング」については果たしてどうだろうか。朝と夜、午前と午後。ケースバイケースで、実は効果が異なってくるという。【藤村昭夫/自治医科大学名誉教授】
化粧水やクリームを使って肌の潤いを保つべく努力する。女性に限らず、最近では美意識が高い男性の中にも、基礎化粧品で肌ケアをする人が珍しくありません。そして、そのほとんどの人が朝よりも夜に多く基礎化粧品を使用していると思います。
本人が意識しているか否かは別として、この何気ない日常的な習慣は、実は医学的にとても理にかなった行為といえます。つまりみなさん、知らず知らずのうちに、私が専門とする「時間治療」の概念を取り入れた生活習慣を実践しているのです。
〈こう解説するのは、自治医科大学名誉教授の藤村昭夫氏だ。
私たちの体にもともと備わっている生体リズム(バイオロジカルリズム)に基づいた「時間治療」の研究を長年続けてきた藤村氏は、現在、国際時間生物学会の理事としてその啓発に努めている。
人生100年時代において、せっかく健康維持・促進の意識が高まっているというのに、時間治療の概念をもっと生かさない手はない、と。〉
夜に化粧水やクリームを使うべき理由
なぜ基礎化粧品は朝よりも夜に多く使うのか……。これには皮膚の透過性が大きく関係しています。
皮膚はウイルスを含む異物が体に入らないようにするための、人体と外界のバリアの役割を果たしています。このバリア機能の“通過しやすさ”を皮膚透過性と呼びます。そして、私たち人間の活動時間帯であり、あちらこちらを動き回って病原菌などと接触しやすい日中より、活動量が減る夜の方が皮膚透過性は高まります。外界との接触機会が減り、バリア機能を高めなくても危険が少ないからです。そのため、化粧水やクリームも朝よりも夜のほうが皮膚の表面を通り抜けやすくなり、より効果が高まるわけです。
ちなみに、アレルギー性皮膚炎の人は、朝よりも夜のほうが痒さが増すというケースが多いと思います。その原因の一つはやはり皮膚透過性にあり、ハウスダストなどが夜は皮膚を透過しやすい。ですので、就寝前には、より部屋をきれいにしておくとよいでしょう。
生体リズムに関しては、約300年前に植物に関する研究成果が報告されており、古い歴史を持っています。その後、動物やヒトにおいても生体リズムのメカニズムが科学的に証明され、2017年には3名の生体リズム研究者にノーベル生理学・医学賞が授与されています。
1950年代には、生体リズムの概念を取り入れた「時間医学」の研究が盛んに行われるようになり、薬の投与時間帯による血中薬物濃度の差などを研究する「時間薬理学」に発展。その知見を患者一人ひとりに適用し、最も効果があり、安全なタイミングで薬を投与する「時間治療」が行われるようになったのです。
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