「ドスンと首に衝撃が。手をやると矢が貫通していて…」4名殺傷でも無期懲役の「ボーガン殺人」 生存者が語った「残虐犯行」の一部始終
おもちゃで遊んでいる
被告が祖母と弟に矢を放ち、母親を呼び出すまでの間、被告から連絡を受け家を尋ねた伯母は、首を撃たれたものの一命を取り留めた。この際、惨状を目の当たりにしている。
サイクリングが趣味の伯母はその日も早朝からサイクルジャージを着用し、ヘルメットをかぶって自転車で家を出ていた。前夜、電話で話した祖母は、被告の弟が就職先の寮に住むため近く家を出ることを気にしていた。伯母も祖母が気に掛かり、実家に向かうことにしたのだ。ところが、出発前に電話をかけたがつながらない。そのため実家に向かっているところだった。
すると被告から電話があり「今どこや」と立ち寄ることを求められた。「あと10~15分ぐらいで着くよ」と伝え実家に到着。ヘルメットをかぶったまま中に入るが、肝心の祖母が見当たらない。洗面所に矢のような物が刺さって倒れている被告の弟が見えたが、当初は“イタズラとしか思わず”、祖母を探した。確かに、ボーガンで家族が頭部を撃たれているという現実を突きつけられた時、瞬時にそれを認識することは難しいだろう。
「『おかあさん来たよ』と声をかけたが返事がなく、寝室にも姿がない。おかしいなあと廊下に行くと、アキ(被告)が階段でしゃがんでいて、何かすごい大きなものを持って私に向けているのが見えました。そのとき私はなおも、アキがおもちゃで遊んでいるとしか思えず、洗面所に入ったところ倒れているユキ(被告の弟)の手に血がべったりついているのが見えて、一気に血の気が引いた。本物だとわかり混乱し、足を掴んで『ユキ、ユキ』と声かけて体を揺さぶっていると、その直後、首のあたりにドスンと衝撃があった。痛みはなく、何か首の後ろに来た感じがあり、目線を右に移すと、私に向かって何か構えているアキが見えた。撃たれた、と思い首に手をやると、長い棒が刺さっているのがわかった。私はこのとき、アキから矢を放つ武器で撃たれたこと、アキも先に撃たれていたことがはっきり分かった」(伯母の調書)
お前は悪くない
〈え、なんで、え?〉
混乱からそう呟いた伯母に、野津被告は言った。
〈ヘルメット外せ〉
一瞬、言われるがままにヘルメットを外そうとした伯母だったというが、そのときに洗面所に倒れていた被告の弟の足がピクッと痙攣したのだそうだ。我に返った伯母は被告に懇願した。
〈殺さんといて、死にたくない、お願い、助けて〉
命乞いをしながら、かすかに動いていた被告の弟をなんとか助けなければと思い、スマホを操作しはじめたところ、被告からこれを取り上げられる。その後被告から、こう言われたという。
〈お前は助けたる。あとで救急車呼んだるから、黙って待っとけ〉
〈すまん、お前は何も悪くない。ほんま、すまん〉
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