持論をまくし立て、出演者を挑発…どんどん時代遅れになっていった「討論エンタメ番組」
放送打ち切り
BS朝日の討論番組「激論!クロスファイア」が、10月19日の放送をもって打ち切りを迎えることになった。その原因は、この日の放送で司会の田原総一朗氏が不適切な発言をしたことにあった。【ラリー遠田/お笑い評論家】
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番組内で彼は「あんなやつ(高市早苗氏)は死んでしまえと言えばいい」と口にした。熱い議論が交わされ、ときには出演者が感情的になることもあるのが討論番組の醍醐味ではあるが、さすがにこの発言は一線を越えていた。放送直後から世間の批判を招き、田原氏は自身のSNSで謝罪した。しかし、それでも騒動は収まらず、BS朝日は24日に臨時取締役会を開催。その場で番組終了が決定された。
この一件は、単に個人が口を滑らせただけの問題として片付ければ良いというものではない。「討論エンタメ番組」という形式そのものが、時代の価値観やメディア環境の変化に適応できなくなっていることを象徴している。
かつての「田原総一朗」はテレビにおける「討論文化」の体現者だった。「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日系)は1987年の放送開始以来、政治家、学者、文化人などを一堂に集め、本音をぶつけ合って議論する場として高く評価されてきた。
権威に屈することなく、社会のタブーにも踏み込むその姿勢は、番組開始当初は斬新であり、ジャーナリズムの理想的な形のようにも見えた。そこでは、怒号や罵声すら熱い議論の証しとして受け止められていた。テレビの中で繰り広げられる激論は、「生放送の臨場感」と「言葉の暴力性」が同居する一種のエンターテインメントでもあった。
しかし、それから30年以上が経ち、社会は根本的に変わった。経済の低迷は続き、日本はどんどん貧しい国になっていき、人々の生活も苦しくなった。視聴者が討論番組をエンタメとして楽しむ余裕を持てなくなってきた。
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