「トランプ氏との緊密関係」は「高市政権の安定」に寄与するか 米財務長官の発言に早くも浮かんだ「サナエノミクスへの牽制」
日本側の徹底した「おもてなし」
トランプ米大統領は来日中の10月28日、就任したばかりの高市早苗首相と初めて対面で会談した。同月27日から29日までの来日は、第2次政権の発足後初である。
【写真】米国歌に敬礼も 日本2泊3日の「おもてなし」、終始ご機嫌のトランプ氏
高市氏の支持率は高いものの、国内の政治基盤はけっして盤石ではない。このため高市氏には、首脳会談の場でトランプ氏との親密ぶりを内外にアピールし、自身の政治的立場を高めることが求められていた。
日本側の「おもてなし」の準備は徹底していた。首脳会談が行われる迎賓館に、日本政府が米国から購入を予定しているフォード・モーターのピックアップトラックを展示するなど、トランプ氏に喜んでもらうためにあらゆる手段を尽くした。首脳会談で、高市氏からノーベル平和賞に推薦すると聞いたトランプ氏は、さぞやご満悦だっただろう。
日本側の努力の甲斐もあって、会談は約40分で終了。両首脳は当初の予定通り日米関税交渉とレアアースに関する2つの合意文書に署名した。
日本を始め欧米メディアは首脳会談の成功を報じたが、国内外で混乱を引き起こしているトランプ政権に接近しすぎることに問題はないのだろうか。
トランプ氏との仲は高市政権の安定に寄与するか
日本滞在中、終始笑顔を絶やさなかったトランプ氏だが、米国内での支持は芳しくない。ロイターが28日に公表した世論調査の結果によれば、トランプ氏の支持率は40%に低下し、任期中の最低水準に並んだ。生活費高騰に対して国民の不満が高まっていることが要因だ。
1日から続く連邦政府機関の一部閉鎖が解決する目途も立っておらず、給与支払いを停止された職員が無料の食品を求めてフードバンクに長蛇の列をつくっている有様だ。
トランプ氏の政治手法にも批判が高まっている。ロイターが23日に公表した世論調査の結果では、回答者の55%が「トランプ氏が法執行機関を利用して敵を標的にしている」との見方に同意した。
トランプ氏の支持率の低下傾向に歯止めがかからなければ、来年11月3日に実施される中間選挙で共和党が大敗し、政権が一気にレームダック化する可能性が高い。そうなれば、高市氏にとってトランプ氏との距離の近さは負の遺産になってしまうかもしれない。
トランプ氏との緊密な関係が高市氏の政権運営の安定に寄与する保障もない。筆者の念頭にあるのはインドのモディ首相だ。
今年2月、首脳会談でトランプ氏と対面したモディ氏は、インドもトランプ氏の「MAGA」のように「MIGA(インドを再び偉大に)」を目指すとした。だが、このご機嫌取りの効果は短く、その後は貿易交渉などで関係が悪化。ロシアからの原油購入を理由として、米国から50%の追加関税を課された。
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