「トランプ氏との緊密関係」は「高市政権の安定」に寄与するか 米財務長官の発言に早くも浮かんだ「サナエノミクスへの牽制」

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米財務長官の発言意図とは

 日本側にとって誤算だったのは、トランプ氏とともに来日したベッセント財務長官の発言だったと思う。

 28日に米財務省が明らかにした内容によると、ベッセント氏は27日に開かれた日米財務相会談で、アベノミクスの導入から12年が経過し、状況が大きく変化していると発言した。アベノミクスとは日本経済をデフレから脱却させることを目的とする積極的な財政・金融政策だ。

 ベッセント氏は円安やコストプッシュ型(生産コストの上昇により起こるインフレ)にどう対応するかが直近の課題だとして、当時との違いを強調し、高市政権の政策パッケージ(サナエノミクス)の詳細についても強い関心を示したという。

 ベッセント氏の発言は日本銀行の金融政策を意識したものと言われているが、筆者はサナエノミクスに対する牽制の意味合いもあるのではないかと考えている。

 米国は日本の積極財政を支持しているとの見方がある一方、ワシントンから気になるメッセージが既に届いている。

日本国債を巡る環境は以前ほど盤石ではない

 米有力シンクタンク「ピーターソン国際経済研究所」のポーゼン所長は9日、高市氏の積極財政が「トラス・ショック」の二の舞となるとの懸念を表明した。

 トラス・ショックとは、2022年9月6日に英国の首相となったリズ・トラス氏が同月23日に打ち出した大規模減税で英国の金融市場が大混乱に陥ったことを指す。これが災いして、トラス政権は44日間という英国史上最短で終わった。英国債は価格が暴落し、これを大量に保有している年金基金の破綻が現実味を帯びたため、イングランド銀行(中央銀行)が異例の介入(長期国債の買い入れ)に踏み切らざるを得なくなったことを記憶している。

 ブルームバーグは21日、「世界のファンドは数十年にわたり日本国債売りで痛手を被ってきたが、長年の敗者が勝者に変わりつつある」と報じた。日本国債を巡る環境も以前ほど盤石ではなくなっている。

 仮に、日本国債が暴落するような事態となれば、運用先が限られる中小の金融機関が大量に破綻する可能性は排除できないだろう。金融システム全体が麻痺することはないだろうが、地方経済が打撃を被るなど政治的には大きなマイナスだ。

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