「縁切り神社」の効果が恐ろしすぎた 元同僚が次々と不幸に…だが祈った本人にも訪れた“代償” 【川奈まり子の百物語】

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恐怖の一夜

 昌彦さんは急いで窓を閉めた。

 かねてAは彼の住所を知っていた。部屋に招いたことこそなかったが、Aが旅先から土産物の生鮮品を送ってくれたこともあれば、彼が実家の畑で採れた野菜をAに送ったこともあったから。

 転職に伴って引っ越すことも検討した。転居していれば、こんなふうにAが来ることはなかったはずだ。しかし近く結婚して新居を構える予定だったから、中途半端な引っ越しは不経済だし……それにまたAがこういうことをするなんて、予想だにしなかったのだが。

――女が自殺してAはおかしくなってしまったのだ。

 そう思ったそばから、再び、窓ガラスがコツッと鳴った。

 Aが何かを投げつけたに違いない。

 他所の部屋の窓に当たる可能性もある。近所迷惑だ。

 下に行ってやめさせるべきかもしれないと思いつつ、昌彦さんは真夜中に異常な行動を取るAのことが恐ろしく、行動に移せなかった。

 話せばわかるのは、正気の人間だけだ。

 下手に刺激したら何をされるかわからないと思われた。

 カーテンを閉めて、ベッドに潜り、またしてもコツッと窓が鳴ったような気がしても努めて無視をした。

 その音は4~5回も聞こえたようだった。

 やがて静かになったのか、いつの間にか眠ってしまったのかわからない。

 まんじりともしない……と、思っていたらスマホのアラームが鳴って、起きていたつもりで眠っていたことに気がついた。

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