「縁切り神社」の効果が恐ろしすぎた 元同僚が次々と不幸に…だが祈った本人にも訪れた“代償” 【川奈まり子の百物語】

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【前後編の後編/前編を読む】信頼していた先輩は「フレネミー」だった 策略で職を失い…怒れる恋人が仕掛けた恐ろしい復讐策とは

 これまでに6,000件以上の怪異体験談を蒐集し、語り部としても活動する川奈まり子が世にも不思議な一話をルポルタージュ。

 仕事もプライベートも順風満帆だった昌彦さん(仮名)は、教育係の先輩Aに結婚を報告したところ、「同僚のB子に言い寄られて困っている」「彼女は他の男性社員とも関係をもっている」と聞かされる。たびたびその噂を持ち出すAにうっかり同調した際の音声を録音された昌彦さんは、それを職場で公開されたことで「いやな噂を流す張本人」として転職に追い込まれてしまう。それを恨んだ昌彦さんの婚約者は、AとB子の共謀を疑い、縁切り神社で2人の“縁切り祈願”をしたことを明かす……。

 ***

 縁切り祈願の報告から数日後の深夜、昌彦さんのスマホにAからLINEが届いた。

「B子が飛び降り自殺して、俺が後ろ指さされている」

 という内容だった。

 このとき昌彦さんは、平気でメッセージを送ってよこしたAの神経を疑い、どう返信したものか少々ためらった後に、不思議に感じた点を素直に訊ねた。

「なぜAさんが後ろ指さされるのですか?」

 すぐに返信があった。

「B子の遺書がデスクにあって、それに俺のことが書かれていたから」

 噂が広まってしまい、立つ瀬がないのだろう。

 そう直感した昌彦さんは、「因果応報だよ!」と返したいのをグッとこらえて……。

「僕は関係ないですよね。もう連絡しないでくださいね」

 そう返信した後、Aをブロックした。

効果絶大

 このことを婚約者に話したところ、彼女は「そんなふうに効くなんて!」と目を丸くした。

「まさか片方が自殺しちゃうとは思わなかったけど……じゃああの神社にまた行かなくちゃ」

「なんで? もう縁切り祈願は済んだのに」

「念願成就したら御礼参りするものだよ。昌彦くんも行く?」

 こう言われて、予定を合わせて2人で参拝する約束をした。

 神社や寺に願いが叶ったことへの感謝を伝えるのが、本来の意味での御礼参り。

 しかし、男女の縁切りを願った結果、女性の方が死んでしまったわけで、昌彦さんは後味の悪さを禁じ得なかった。

 とはいえ、元はと言えば彼の問題だったのに婚約者だけに負わせるのも何か違う感じがしたので、御礼参りに付き合おうと思ったのである。

 彼女と会話をした翌日の深夜、そろそろ寝ようと思っていた昌彦さんの寝室の窓に、コツッと石つぶてか何かが当たった。

 硬質で小さな音だった。ガラスが割れそうなほどではなく、窓の近くに枝を張り出している木でもあれば、尖った枝先が当たったかと思うところだ。

 だが、ここは彼が1人暮らしするマンションの3階で、そんなものは無い。

 カーテンと窓ガラスを開けて、夜気に顔を晒しながら、外の様子をうかがった。

 すると、街灯に照らされた下の舗道にAが立って、こちらを見上げていた。

 口もとは歯を見せて笑っているようでありながら、目を大きく見開いてまばたきをしないといった、一種異様な表情で、無言だった。

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