信頼していた先輩は「フレネミー」だった 策略で職を失い…怒れる恋人が仕掛けた恐ろしい復讐策とは【川奈まり子の百物語】

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裏切った男

 しかも問題のB子は他の複数の男性社員とも深い関係になっており、そのことを知らないのは昌彦さんだけなのだという。

 昌彦さんはAの話を信じて、件のB子をそれとなく避けるようになった。

 その後、相談を受けてからというもの、Aは昌彦さんと2人でいるときにその女性の悪口を面白おかしく喋るようになったのだが、それについ同調してしまって……。

「彼女に対しての下品な冗談を口にしたことが2~3回ありました。まさか録音されていたなんて……」

 婚約をAに打ち明けてから2か月ほど経ったある日、職場に行くと同僚たちの雰囲気が妙によそよそしかった。Aは体調を崩して休んでいるという。何があったのか気軽に訊ける相手がいなかったので途方に暮れていると、上司に別室に呼ばれた。行ってみると、女性社員が2人、昌彦さんを睨みつけていた。

 そのうち1人は、Aが言い寄られて困っていると話していたB子だった。

 上司は、彼女から預かったというUSBメモリをパソコンに挿して、その場で音声データを再生した。

 B子の悪口を言って、嘲笑っている自分の声が室内に流れ、昌彦さんは顔から火が出る思いがした。

 弁解しようにも、Aの声は巧みにカットされていた。これまで慕ってきたAの評判を落とすのもためらわれて、ただ謝るほかなかったという。

 Aに裏切られたことは明白だった。上司に叱責を受けたり、同僚たちから軽蔑されたりしたこと以上に、Aの背信の衝撃が大きかった。昌彦さんはその日は早退し、翌日も会社を休んでしまった。

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