“初陣”で敗北の黒歴史…「名古屋地検特捜部」は廃止すべき? 発足当初から疑問視する声も

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 かつては「巨悪を眠らせない」とのフレーズで“最強の捜査機関”の名声をほしいままにしていた東京地検特捜部に象徴される「特捜検察」。

 その担い手は東京、大阪、名古屋という三大都市の地検に置かれている。だが、大阪地検特捜部の証拠改竄事件(2010年)と、その後に相次いで発覚した特捜検事の違法な取り調べ(2019年)などの相次ぐ不祥事により、その威信は地に落ちた感もある。

 少子化時代のキーワードである「人手不足」を背景に、職場の人的資源の重点再配分が社会全体で急務となる中、検察庁も次代を見据えた人材再配置が課題となっている。そうしたなか、以前から指摘されてきた名古屋特捜の“廃止論”が再び、くすぶり始めている。

残った3つの特捜部

 特捜部は終戦直後の1947年、東京地検に設置された旧軍需物資の横領を取り締まる隠退蔵物資事件捜査部が49年に名称変更して誕生した。その後、大阪地検には57年、名古屋地検には96年に創設されている。

 上述の2010年に発覚した、大阪地検特捜部の証拠改竄事件を教訓にして実施された検察改革の指針として、検察の在り方検討会議が11年3月31日にまとめた提言がある。その中で、特捜部の組織体制や編成、人員配置を含めて「見直しを検討すべき」と問題提起されている。さらにその上で、特捜部の存廃についても検討した結果、「廃止するべきであるとの意見も示された」ものの「(汚職事件など、重要事件に対する)国民の期待は依然として存在している」と判断した。

 この時に示された具体案こそが「名古屋地検特捜部を廃止して東京地検及び大阪地検の特捜部に集約するべき」という廃止論だったのだ。

 特捜検察は2019年12月、カジノ建設の是非が問われていたIRにからむ汚職事件で衆院議員を逮捕。国会議員の逮捕は10年ぶりで、国政の政界汚職となると実に17年ぶりの快挙となった。

 日弁連の副会長経験者は、こう指摘する。

「提言書では『各特捜部は、これまで、国民全体が被害者的立場にある汚職、脱税を中心に(中略)政界、官界、経済界における犯罪を積極的に摘発する役割を果たしてきた』と一定の評価を示しています」

 副会長経験者も同様に、特捜がその後も存続した経緯には理解を示している。しかし、

「組織形態の細かい修正は行ったものの、体制そのものは従来通りのまま維持されており、小手先の改革といった印象はぬぐえません」(同経験者)

 特捜部ではないが、大阪地検に勤務経験がある元検事も手厳しい。

「マル特(特捜部)は、政界腐敗を正してナンボの組織。令和になってから国会議員を刑事訴追しているのは東京地検だけ。東京が手掛けたのは略式起訴を含めば10人を超える。大阪は、昭和の頃にはタクシー汚職や砂利船汚職で華々しく国会議員を挙げ(検挙し)ているが、それもすでに過去の栄光に過ぎない」

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